台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
ぽかんとする紫苑の唇が丸く開いて、微かに弧を描いて、感情を失くす。
肩同士が触れ合いそうなほど近いのに、目はスマホから離れない私を見下ろす。
――可愛い。憎い。嬉しい。腹立たしい。
そんな感情が紫苑の中に一度に湧き出て、そっと自分のスマホをソファの端に置いた。
「……爽真ともずっと、その距離感で居続けたの?」
声に反応して顔を上げた瞬間――影が私を覆おうとする。
ソファに座る私の足を越えて、紫苑が座面に手をつく。
私の方を向く紫苑の上体が傾いてきたのに反応して、反射的に肘掛けに背を預けて仰反る体勢になった。
「し、……」
紫苑くん?成宮くん?
咄嗟に距離を取ろうとした呼び名が、どれも違う気がして止まる。
紫苑はそれすらもわかっているような顔で苦笑して、真上から私を見つめ続ける。
「香月さんって無防備だよね」
甘く、低く、痺れさせる声色。
なのにどこか切なそうなのが、色っぽい。
「自分を口説き続けてる男と簡単に密室作って、距離詰めて。
ねぇ、爽真にもずっとそうしてきたの?」
――そう、し、て………
きた。
爽真に仲間意識を持った日から、私は確かに爽真に遠慮がなくなった。