台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―

ここはちょっと、私にとっても痛い記憶。だから今度は私が眉を寄せる。
手を裏返して爽真の手を握り返したのは、たぶん、その時の苦さがなんとなく蘇ってきたからだ。

私の表情を読み取って、爽真が焦った顔をする。

「あれは……白石とっていうか」
「いいの!そのあと、美玲のシナリオが少し変わったってことを知ったから」

爽真の弁解を遮るために、少し声が大きくなった。
へら、と軽い笑いで誤魔化してまだ私のターンを続ける。

「美玲が選択権を得たのを聞いて、爽真を選ぼうとしてるって気付いた。
だけどそのやり方が強引で、台本が壊れかけたから――
巻さんと紫苑と手を組んで、歪みによって起こった違和感をなくそうとした」

真面目な顔で言った私に、爽真が愕然とする。
言葉を探すみたいに瞳が揺れて、薄く開いた口はしばらく何も言わなかった。

「――――は、なんで……」

「台本が壊れることで、傷つく本物の恋と美玲や紫苑――なにより爽真を、守りたかった」

「……俺?」

「そう。紫苑と美玲の暗黙の両想いを無視して、不自然に美玲が爽真に走ったんだよ?
何もしなかったら、爽真と美玲の裏での関係を疑われる。
そしたら美玲は裏切り者、爽真は略奪者に見られかねない、でしょ?」

淡々と話す私に、爽真はまだ呆然としている。

「だから、紫苑が瑠奈に迫られすぎて不安になった美玲を、爽真が支えたように見える構図を作った。
それなら違和感なく、美玲と爽真は結ばれる――そう思ったから」

一度俯いて、もう一度爽真を見る。
それから、肩を竦めた。

「爽真は美玲が好きで、美玲もそうだから、これで丸く収まる。そう思ってたの、私」

「違――」

「うん。違ったなって、今ならわかるよ」

ぎゅっと爽真の手を握り直す。
微笑んだのは強がりで、先を思うとちょっと切なくなってくる。

それ以上は言わせない。
そんな意志を込めた目に、爽真の夜色の瞳が揺らぐ。

どうするか少し悩んで、結局私に譲って引いてくれた。
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