台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「その台本が、ここ最近色々あって破綻しだした。
その軌道修正をするために、ここ最近俺と香月さんは制作側にも手を回して色々動いてたんだよね」
「そんな……全然知りませんでした……」
「台本とか破綻とか、なんでそんな大事なこと、ずっと黙ってたんスか!」
「言う必要ないからだよ」
ひよりと陸の動揺を、紫苑が冷たく両断する。
ひよりがびくりと肩を震わせて、陸も背もたれに張り付いた。
「台本はアオバケ最大の秘密。全員が知ってたら恋愛のリアル感が死ぬ。俺らと陸たちは与えられた役割が違うってコト。
破綻を言わなかったのは、自然に演技できる奴が俺と香月さんの他にいなかったから」
攻撃的な正論に、誰も口を開けない。
瑠奈が消えた理由を知るために、前提を語るのは必要なこと。
理解していても焦れる衝動を抑えられず、爽真は机の下で拳を握り込んでいる。
「ここまで、理解した?
で、本題の瑠奈ちゃんが消えた理由だけど――これは俺の推測。瑠奈ちゃんは俺に全貌を話してくれたわけじゃないからね」
「は?なんだよそれ……!」
立ち上がって詰め寄りかけた爽真の腕を陸が掴んで止めようとする。
大和も立ち上がって、全く動じていない紫苑に腕を翳してガードした。
「推測――だけど、合ってると思うよ。
俺と香月さんの思考回路って、かなり似てるから」
冷ややかに笑って上目に爽真を見る蜂蜜色の瞳は、冷めているのに感情的。
爽真がテーブルが僅かに動くほど前のめりになったのを、陸が体に抱きついて必死で止めた。
「紫苑くんは、どうして瑠奈ちゃんと似てるってわかるの……?」
美玲が遠慮がちに手を挙げて問いかける。
空気を少しでも戻さなくては、そんな必死さがあった。
「……。みんなはエゴサ、どのくらいやってる?」
紫苑からの唐突な問いかけに、面食らってみんなが止まる。
少し考えて、ポツポツと答えが返ってきた。
「あの、私は動画と公式SNSのコメントを少し見るくらい……」
「俺も同じかな」
と、美玲と大和。
「私は動画を観た時に流れるコメントをさらっと見るくらいです……」
「あたしもそれ!」
ひよりと彩加も手を挙げる。
「俺は何もしてないっす!」
「……」
爽真に抱きつきながら、陸も答える。
爽真は黙ったままだった。
みんなの返答に、紫苑は予想通りとばかりに頷く。
それから机面に肘をついて、策士の笑みを浮かべた。
「俺と香月さんはさ、動画コメント、SNS、匿名掲示板まで毎日全部チェックした上で分析、計算までして24時間ずっと演技し続けてた。
――現に俺や香月さんが本当はどんな人間なのか、誰も知らないでしょ?」
冷たく並べた紫苑の言葉に、全員が暗い顔で押し黙る。
その中で唯一表情を変えない爽真を見た紫苑の目が、細くなった。
「だから香月さんが何に気付いて、何を思って、結果どうしようとしているのか――考えなくても、俺にはわかるってわけ」
紫苑はじっと、爽真のことだけを見ている。
苛立ちと、悔しさと、納得いかなさがないまぜになった感情が、その目に渦巻いていた。