台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「……最後にさ。俺なりの花向け、受け取ってくれない?」
「花向け……?」
ぎこちなく首を傾げる。
そんな私を前に、紫苑は黒い策士な顔をして、まだ置き物状態のカメラに視線を投げた。
「最終日の告白イベント。
本当は男子からだけど――……“瑠奈ちゃん”なら、する側になるのもアリでしょ」
それって、つまり――
理解する間に、紫苑の表情がまた変わる。
人好きのする爽やかな笑顔。
“瑠奈”が恋した爽やか王子・“紫苑”だ。
「カメラは止まってるけど、プレ・クランクアップ?
ってことで、いつでもどーぞ。“瑠奈ちゃん”」
(本当にこの人は予想外……!)
呆気に取られて言葉も出ないし、この状況で?って引いてもいる。
でも、私が迎えたかった“悪女・瑠奈”の晴れ舞台を、目の前に用意してくれた。
「……」
静かに下を向いて、まだ混乱している心を落ち着かせる。
仮面を被った紫苑は、期待を隠して私の顔が上がるのを待っている。
早朝のコントラストが少し弱まった、夏の終わりを感じさせる空の下。
白い砂浜に波が静かに迫る音がする。
録画ランプの消えているカメラのレンズだけが、私たちを見守っていた。
瞑った目を、ゆっくりと開ける。
つま先が自然に内側を向いて、緩く握った拳が胸へと上がる。
髪が跳ねるほど勢いよく顔を上げた時には、甘ったるい笑顔を弾けさせていた。
「瑠奈の王子様は、ずーっと紫苑くんですっ!
だから瑠奈と、付き合ってくださいっ♡」
――これが最後の、砂糖致死量げきあまボイス。
モロにくらった紫苑が、初めてツーショットタイムに誘った時のように僅かに目を見開いて、少しの間固まった。