台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
澄ましている瑠奈が、また間を置いて空気を切り替える。
視聴者の疑問を、まるで先読みしたかのように。
「ここまで聞いて、なぜ私が急にこんな暴露配信をしたか、と思っていますか?」
>>えっ
>>はい……
>>録画だよね?これ
>>エスパーかよ
ずっと真顔だった瑠奈が、一瞬考えるように俯いて前を向く。
その時には、力なく口元が弧を描いて、まるで自嘲気味に笑っているかのようだった。
「答えは簡単。
私は、爽真くんのことが好きだからです」
コメントが、数秒途切れる。
瑠奈も何も喋らない、完全な沈黙。
“え”が連なる文字列が画面を埋め尽くし始めた頃、瑠奈は再び喋り出した。
「冷たかったですよ?爽真くんはずっと冷たかった。
何考えているかわからないし、話しかければ“別に。”ばっかり」
――嘘。真っ赤な嘘。
だけどカメラの前に於いては、これは動かぬ真実だった。
「でも、私が“誰か”を傷つければ怒ってくれるし。
間違ってることはちゃんとそう言ってくれるし。
……そういう辛辣な優しさが、嘘つきな私には思ったより刺さってしまった」
――“誰か”は私自身。
本当は怒るばっかりじゃなくて、甘やかすみたいな優しさも、理解して寄り添ってくれる優しさもくれていた。
でもそれを言ってしまうと、私が作りたい真実が塗り変わってしまうから。
「……だから、爽真くんが大嫌いなぶりっこ女に誑かされたって、世間に誤解されたままにするのが嫌でした。
本当は違うのに。それをどうしても、証明したかった」
>>いい話……か……?
>>待て、絆されるな。
>>普通にしおん騙して、裏で別の奴好きだったって最低なこと言ってるからね?
>>しおんは落ちてないから騙されてないけどねwww
>>しおん教信者はひっこんでろ
「これが正しいことだとは思ってません。正当化する気もありません。
そもそも恋愛リアリティショーは、飾らない私がありのままの恋を皆さんにお見せする場所。
私のしたことは、私の恋を応援してくださっていた方を裏切る行為です。
本当に申し訳ありませんでした」
アップになっていたカットが変わって、瑠奈が深く頭を下げる全身が映る。
後ろ髪が全て前に落ちるほどの礼とその長さに、コメントの流れがまた緩やかになった。