台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
――……
ドア一枚隔てた廊下は、わずかな陽光しかなく開放的なリビングに比べて少し暗い。
空気が停滞する暑さに、少し居心地の悪さを感じながら、2人は向かい合った。
「このあとの撮影――俺は、白石に恋愛的な演技をすることはしない。
制作側にも、今朝話をつけた。白石に迷惑がかかるようなやり方もしない」
少しの躊躇いもなく告げられた、台本を無視する宣言。
美玲は僅かに目を見開くも、まるでわかっていたかのように静かに微笑んだ。
「……うん、わかった。
教えてくれてありがとう。これで私、びっくりしなくて済む……」
感情をいなすために前に組んだ手を何度も握り返しながら、美玲はすぐに爽真に背を向けようとする。
それを、爽真の声が制した。
「ごめん」
一歩、リビングに戻りかけた美玲の足が止まる。
続く言葉を、待ってしまった。
「俺の勘違いなら無視していいんだけど――……
白石がもし俺のこと、恋愛的な目でずっと見ていたんだとしたら……無碍にし続けて悪かった」
美玲がギュッと自分の手を握りしめる。
どんな顔をして振り向けば。
思うほど、その表情は弱く歪んでいく。
――初めて。初めて私の気持ちを、受け止めてくれた。
「うう、ん……私こそ……ずっと勝手なことばっかり言って、ごめんね」
首を横に振るたび、込み上がってくるものを我慢する。
泣く資格はない気がする。そうできるほど、自分は真っ直ぐに思いを伝えてはいなかったから。