台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―

Ep.82 最終日と不在の悪女

8月31日。火曜日。
7:00。


今日でアオハルvacation in SUMMERの撮影は、最終日を迎える。

最後の朝食シーンから始まる、撮影開始の予定時間は8:00。

なのに全員やたらと早起きで、妙な緊張を漂わせながらダイニングテーブルに着いていた。


「さ、……最終日っ!いよいよですねっ。
緊張しますねっ!」

重めの空気に耐えきれなくなったひよりが、ぱちんと手を打って空元気でそう言った。

「……んね!って言っても、女子側は告白受ける側だからさぁ…多分男子の方が緊張してるよねっ!」

これ幸いと乗っかった彩加が、隣に座る陸の方を叩いて話を振る。

「え゛っ!えーっと……そっすね!
爽真さんは、やっぱり台本的に美玲さんに告白――……」


――パン!


陸の反対隣に座っていた大和が、すかさず陸の口を塞ぐ。

シーンと、また重苦しい沈黙が逆戻りした。


大和、ひより、彩加がそうっと向かい側にいる爽真の顔色を伺った。


「……」

何も喋らない、一見していつも通りの無表情。
けれど昨日今日においてはその無風さに、勝手に感情を見出してしまうから誰も何も言えない。


一昨日20時の緊急配信を、この場にいる全員が観た。
けれど昨日から誰1人その話題に触れられないのは、爽真が終始この調子だからだ。


「暗ぁ。この後和気藹々としんみりする撮影なんだけど、皆そんなんでできるの?
一昨日の個別インタビューすら、俺以外全員切り替えできなくてリスケになってるのに」


椅子にだらりと背を預け腕を組む紫苑が、嫌味っぽい口調で周りを煽る。


「紫苑さん……ほんと、キャラ変わったッスね……」

「この状況、俺もそれなりにムカついてるからね」

紫苑に向かって遠い目をする陸に、つんと素っ気なく顔を背ける。

運悪く爽真と紫苑の間に挟まれる形になってしまった美玲は、気まずそうにすることもなくずっと俯いて何か考え事をしている。


ピリつく空気の発信源は、間違いなく爽真と紫苑。


そんな2人を俯きがちに交互に見たひよりが、突然すっと手を挙げた。

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