台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
――――
――……

古いコンクリートが欠けた屋上に、温い夜風が吹き抜ける。
御手洗に連れて行かれたのは、オンボロ事務所の屋上。

貯水タンクとか、よくわからない太いパイプが剥き出しになっているのがほぼ面積を占める、古くて狭い場所だ。


星もない、真っ暗な空の下にふたりきり。

眼下に見える夜景はぽつぽつと灯る民家とコンビニやドラッグストアの灯りで、ロマンチックさのかけらもない。

一応爽真と向き合って、緊張と怖さに顔を顰めた。


「……何の用?」


わざと突き放すように、問う。
爽真はまっすぐ私の方を向いて、動画で見たような不機嫌な顔をした。


「“批判はフジイ芸能事務所まで”って言ったのは、瑠奈だろ」


予想外の返答に、開いた口が塞がらない。
身構えて変に強張っていた心も、思わず脱力してしまった。

「……。直接来いって意味じゃないんだけど」

「手段は明言してないだろ」

「そうだけど……っ!って、そういうことじゃないから!」

なんなのこれ?
何を言っても引かなそうな手強さ。

すぐにでも心を暴かれてしまいそうで、ぎゅっと強く腕を組んだ。
< 806 / 816 >

この作品をシェア

pagetop