台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「なんかムカつく」
言動が理解不能なのに、なぜか胸がひとつ跳ねた。
「――……っ、!」
反射的に開いた口が、すぐに歯を立てて閉じる。
その歯が爽真の手のひらの柔らかい部分に食い込むと、爽真は吐息混じりに短く呻いた。
「いッ……」
瞬間、パッと手が離れる。
噛み跡のついた手のひらを苦い顔で見つめながら、爽真は怪訝な顔をした。
「……噛むか?普通」
「正当防衛!」
腰に手を当て、開き直って胸を張る。
一瞬でも申し訳なさそうな顔をしたら負ける気がして、 虚勢を張って笑った。
「…………」
爽真はぽかんとして私を見る。
かと思えばもう一度ちらっと噛み跡を見て、ふっと息を漏らした。
「な、なに!」
爽真が急に屈んで、間近で私の顔を覗く。
黒の深い爽真の瞳は、やっぱりとても澄んでいる。
油断したら吸い込まれてしまいそうで、意識して強気な態度を保った。
「やっぱ変だわ。――瑠奈」
不意打ちで微笑んだその顔に、心拍数が跳ね上がる。
身体中の血液が沸騰した気がして、顔が熱くなった。