ORANGE×BOY
「はぁ、……はぁ、……死ぬかと思った……」
自分の部屋のベッドに飛び込み、私は天井を見つめながら激しく息を切らせていた。
安全な場所に帰ってきた安心感で、一気に体の力が抜けていく。
バクバクと、まだ心臓の音がうるさい。
目を閉じると、夕闇の中で見たあの綺麗な横顔と、圧倒的な強さが網膜に焼き付いて離れなかった。
(……よく考えたら、私を守ってくれたみたいになっちゃったよね。お礼、言いそびれちゃったな……)
助けてもらったのに、何も言わずに逃げ出してしまったことに胸の奥がちくりと痛み、小さい罪悪感が広がった。
「……ううん、でも、あの人もどう見てもヤンキーだったし!」
咲良はぶんぶんと首を振って、ぎゅっと枕を抱きしめた。
「関わったら絶対に面倒くさいことになるもん。そうだよ、お礼なんて言わなくて正解。もう二度と会うこともないんだから……まあ、いっか!」
自分にそう言い聞かせ、咲良は頬を枕に埋めた。
それが、咲良の平穏な高校生活の終わりを告げる、最悪で最高な運命のプロローグだとは、この時の私はまだ、知る由もなかったのだ。