翡翠の一輪花【完】
prologue
気がつけば、いつも隣にいた。
ニコニコと屈託のない笑みを浮かべて
「葵~!!」
と、俺の後ろを無邪気な笑顔でついてくるのが、当たり前だった。
仲のいい幼なじみ、だったんだと思う。
お互い、組の将来を背負う立場として。
それ以上でも、それ以下でもない。
――はずだった。
いつからだろう。
………その“当たり前”が、少しずつ形を変え始めたのは。
最初は、一緒にいると落ち着く。
………ただ、それだけだった。
───けれど、いつからか。
気がつけば、その姿を無意識に視線で追っていて。そばにいないと、どこか落ち着かない。
………そんな、説明のつかない違和感が積み重なっていった。
気づかないふりをしていた。
今の関係が壊れるのが怖くて。
変わってしまうのが嫌で。
だからずっと、”知らないまま”でいようとした。
――けれど。
月日が流れ、アイツが戻ってきた”前と変わらない”その日常で。
俺の中で、何かがあきらかに変化した。
(あぁ、やっぱり――)
もう、戻れない。
……もう、知らないふりは、できない。
〈A single jade flower〉