一途な社長に溺愛を教え込まれた夜
「はい。先ほどアポイントを取れた会社へ向かいます」

彼は車のドアに手をかけたまま、私をじっと見つめた。

その瞳の奥が、何を考えているのか読めない。

「手ごたえは?」

「……正直に申し上げますと、アポが取れただけで、確約は何もありません」

私は背筋を伸ばし、努めて明るい声で言い放った。

「なくても、逆転してみせますよ。私、だてに昨年の営業実績2位を誇っているわけではありませんから」

強がりだろうか。

でも、今はそうやって自分を奮い立たせるしかなかった。

会えるだけでもチャンス。

そう信じて動かなければ、私はまたあの会議室で味わった絶望に飲み込まれてしまう。

すると、黒瀬社長はふっと小さく息を吐き、私の車の助手席へと自然な動作で乗り込んだ。

「……え?」

私は呆然と立ち尽くす。

目の前の光景が理解できない。
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