一途な社長に溺愛を教え込まれた夜
「ああ。それは、俺のような人間が一番持っていない武器だ。……だから、君は俺の横で輝いていればいい」

「……はい」

心臓が跳ねる。

輝いていればいい。

そんな言葉、これまで一度も言われたことがない。

「次の信号を右だ。……客先へのルート、確認したか?」

「はい! 完璧です!」

私はギアを上げ、加速した。

助手席に社長が座っているという緊張感は、いつしか心強い支えに変わっていた。

彼の期待に応えたい。

この人の隣で、営業としての価値を証明したい。

失敗から始まったこの一日が、いつの間にか、私にとって最も重要な人生の転換点に変わろうとしている。

「行きますよ、社長」

「ああ。見せてもらおうか、高梨美優の逆転劇を」

助手席からの静かな視線を受けながら、私はアクセルを踏み込んだ。
< 18 / 92 >

この作品をシェア

pagetop