一途な社長に溺愛を教え込まれた夜
担当者の顔が、ニヤリと崩れた。

「さすがだね、黒瀬社長。あなたのその即決力、本物だよ。……契約するよ」

「ありがとうございます」

私は、そのやり取りを、ただ呆然と見ているしかなかった。

これが、社長の仕事。

悔しいけれど、私には逆立ちしたって真似できない。

黒瀬慧という人は、どこまで高く、どこまで遠い存在なんだろう。

会社を出て、社用車に乗り込んだ後も、私の頭の中は真っ白なままだった。

「……よかったんですか? あの契約で」

私は震える声で尋ねた。

「利益、一割程度しか出ませんよね。会社としていいんですか?」

黒瀬社長はハンドルを握り、夜の街を見据えたまま静かに答えた。

「利益など後からいくらでも作れる。それよりも、スタンダードプランの見直しをしろ。あの男に言った言葉通りにな」
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