一途な社長に溺愛を教え込まれた夜
私は息をすることさえ忘れてしまい、彼を呆然と見つめるしかなかった。

社長の瞳は、月の光を受けて優しく揺れている。

「社長……」

私の声は掠れてしまった。

彼に見つめられるだけで、溶けてしまいそうだ。

「困ったな」

彼は小さくため息をつき、私の髪を一房、指先で撫でた。

「そんな顔されると、帰りたくなくなる」

言われた瞬間、足元の地面が消えてしまったような衝撃が走った。

帰りたくない……その言葉が持つ意味を、私は全身で受け止める。

私も帰ってほしくなかった。

この夜を、この時間を、もう少しだけ引き延ばしたかった。

けれど、何も言えなかった。

ただ、彼の黒い瞳から視線を逸らすことしかできなかった。

「……また今度だ」

彼はそう言って、少し名残惜しそうに背を向けた。
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