一途な社長に溺愛を教え込まれた夜
「ああ。あれか、秘書だ。……俺の幼馴染みでね」

幼馴染み。

その言葉を聞いた瞬間、私は自分の勝ち目のなさを悟った。

長年連れ添った彼女に、ただの部下である私が敵うはずがない。

そう思った私の腕を、彼がさらに強く抱きしめる。

「……嫉妬か?」

心臓が跳ねた。バレた。

「いいえ。嫉妬なんて」

「俺の腕、強くなってるぞ」

彼の指摘に反論できず、私はただ唇を噛んだ。

すると、黒瀬は私の身体をゆっくりと反転させ、自分と向き合うように抱き直した。

彼の瞳が、真っ直ぐに私を射抜く。

「俺が見ているのは、美優だけだ。おまえだけを見て、おまえだけを考えている」

名前。

会社で、しかも社長室で、彼に名前で呼ばれた。

その事実に、鼓動が止まりそうになる。

「社長……」

「今さら『社長』か? 美優」
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