一途な社長に溺愛を教え込まれた夜
「美優、ここで少し待っていてくれ。すぐ戻る」

「はい」

社長は私の手を取り、そっと離れた。

人混みの中に消えていくその背中を、私は不安げに見つめる。

場違いな場所に一人取り残されたような疎外感。

社長の「美優」という呼びかけだけが、唯一の支えだった。

不意に、背後から気配がした。

「君、名前なんて言うの?」

振り返ると、私と同じくらいの年齢に見える、少し派手なスーツを着た男性が立っていた。

彼の視線が、私の首筋から足元までを下品になぞる。

「……高梨と言います」

「へえ、高梨さんか。下の名前は?」

「美優です」

「美優ちゃんか、かわいいね」

男性は慣れた足取りで私との距離を詰めてくる。

その距離があまりにも近すぎて、私は反射的に一歩後ろへ退いた。

けれど、彼はさらに踏み込んでくる。
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