一途な社長に溺愛を教え込まれた夜
鼻先が触れ合う。こんなにも近い。

この人の全てを、独り占めしているような錯覚に陥る。

「私の……慧さん」

名前を呼ぶと、彼は満足げに破顔した。

その笑顔を見ているだけで、視界が滲むほど幸せだ。

彼はソファの背に手を回し、私の身体を抱き寄せる。

「君とこうして過ごしていると、仕事のことも、世間の目も、どうでもよくなるな。……今夜は、ただの高梨美優として、俺の隣にいてくれ」

「はい……」

「美優、俺のことを見ていてくれ。……他の男の影など、一ミリも入り込む隙がないほどに」

彼はそう言うと、ソファの背に私を押し倒すようにして、ゆっくりと唇を重ねてきた。

それは岩渕に絡まれた時の嫌悪感を、完全に塗り替えてしまうほど甘く、支配的なキスだった。

彼の指が私の背中をなぞり、ドレスのファスナーに触れる。
< 62 / 92 >

この作品をシェア

pagetop