捨てられ才女はどうやら繁栄の切り札だったようです~新生活を謳歌していたら、記憶チートで追放先が大発展していました~
第3章 領地の可能性
7.爪の使い道
戻ってからの夜は気持ち良く寝られた。現金なもので不安が軽減されたからだ。
翌朝、まずイエティの素材を確認して……その後、諸々の資料を確認した。
その間に王都へもいくつか手紙を送る。内容は懇意にしている貴族や官僚に向けたもの。マイナスなことは書かず、相手を気遣うだけにしよう。
まだ色々と動くには早すぎる。
今はおとなしく情勢を見守って私は私にできることをやるしかない。
数日後、レオールから交易の推進について補助員がやってきた。主に山に関する専門家だ。
(本当にありがたいわ……)
それから私は改めてヴォルデの住民代表たちと会合を持った。
いずれにしてもヴォルデの民と協力しなければ、この地方に生息する魔獣の管理も進まない。
住民代表は体格のいいおじさんで、名前をトルドと言った。
茶色の髭に丸太のような腕の持ち主だ。
小さな眼鏡の下からカンペ丸読みで挨拶される。
「えー、栄光ある殿下のご尊顔におかれましては、夏の草木よりも――」
「……ごめんなさい、もっと砕けていいわ。呼び方も『コーデリア様』くらいで結構よ」
トルドと他の代表が目をぱちくりさせる。
「そーいうわけにも……」
「んだんだ。南では代官様への言葉遣いひとつでえらい目になると聞きましたぞ」
その話は初耳だ。私の隣のルーインも驚いている。
いや……でも南、ラッセリア公国の南部か。この前の話を総合すると、ディルダは公国南部と西部で好き勝手やっている。
ディルダの威光を盾に現地の住民に威張っていてもおかしくはない。
「私は大丈夫よ。気にしないわ」
「はぁ……ではそのように……」
怪訝な目で見られているが、硬さは少し取れた。
こういうところから交流を始めなければならない。
で、まず問題なのはヴォルデをどうするか……住民自体にも活気が見受けられない。それは長い間、半ば流刑地のような扱いであったからだ。
住民自身がやる気を出さなくては魔獣についてもどうにもできない。
今こそ私の知識を活かしてヴォルデの住民を奮い立たせなければ。
そのための情報を手を抱えて私はこの会談に臨んでいた。
「このヴォルデはかつて鉱山として有名な町でしたね?」
「まぁ、そりゃあ……。でもそれも何十年も前に衰えましたからなぁ」
トルドが懐かしそうに目を細める。
かつてヴォルデはラッセリアでも有数の鉱山地帯だった。魔獣へ有効な金属であるミスリルが産出されていたし。
だが徐々に採掘量が減り、採算が取れなくなってきて……私が生まれた頃の二十年ほど前に全鉱山が閉鎖されてしまった。
こうしてヴォルデからは誇りとなる産業が失われてしまった。
「さしあたり、ヴォルデ山脈の鉱山へ案内してもらえるかしら?」
「我々は構いませんが……」
トルドや住民の反応にはもう諦めの色があった。
今までも恐らく、このようなやり取りはあったのだろう。
中央からよくわからない人が来てはちょっと試し、成果が出ずに引き上げる。そのようなことの繰り返しだったに違いない。
ルーインを伴い、私たちは屋敷からヴォルデの北へと向かう。
ヴォルデ地方は雪冠の覆う山脈が取り囲む盆地だ。鉱山は山脈沿いに点在する。
イエティの爪や角、あとはツルハシなどの掘削道具も馬車に積み込み、何台もの馬車の列で北へと向かう。
移動中、ルーインがこそっと聞いてきた。
「ヴォルデ北部の鉱山は早くに枯れたところですよね?」
「ええ、そうね。本によると鉱山は北から順々に枯れていったとあるわ」
私は馬車に持ち込んだヴォルデ関連の本にぽんと手を置いた。
「でもそれからは……百年くらい放置されているわ。ただ、地道にやるしかないかも。イエティの素材が手に入って、できることも増えたしね」
北に近付くと山の冷気を感じる。夏なのに体感的には晩秋くらいの気温だ。
閉鎖された鉱山の前で馬車から降りる。トルドたちの前で私はイエティの爪を取り出した。
爪からはまだ氷の魔力が流れ出ている。
私に魔術の才はないけれど、普通の人でも魔力は感じ取れる。このイエティの爪の魔力は私にもわかるレベルだ。
イエティの爪を見て、トルドがはっと目を開いていた。
「それは……まさかイエティの骨か爪ですか?」
「イエティの爪よ。これでミスリルを探せるんじゃないかしら」
同行していた帝国の専門家たちも頷いていた。イエティは帝国にはいないが、魔獣の素材を活用する術は身につけている。
それに私も――帝国に留学していたし。ルーインや専門家に指示を出し、イエティの爪を砕いていく。
青色の爪が粉になり、風が吹くと魔力を帯びた冷気が漂う。
「イエティで鉱脈を探すなんて、何十年振りかのぅ……」
住民代表の中で最年長のおじいさんが杖をつきながら唸った。トルドがおじいさんに頷く。
「昔はよくやってたとか……本当に見つかるんですかい?」
「イエティは強力な魔獣じゃが、倒した恩恵も大きい。ヴォルデの鉱山も元はといえば魔獣を倒し、その素材を活用して見つけ出したものじゃからの」
レオールがあっさり倒したのだが、実はその通りでイエティはかなり強めの魔獣だ。
遠距離から仕留めるのが上策で、素材の回収も優先しない。
「コーデリア様はお若いのに、よくよく物事を存じておられるの」
「うぅむ、公国の才女という触れ込みは本当でございましたか」
聞こえてる聞こえてる。
恥ずかしいけれど……反発されるよりは受け入れてくれたほうがいいか。
ルーインがイエティの粉を手持ちランプに仕込む。ランプには四方に隙間があり、魔力が刻まれ微風を起こすようになっていた。
青白い粉がランプから少しずつ浮遊していく仕組みだ。
「では、始めますね!」
「お願いね」
ルーインを先頭に静かに鉱山へと近付いていく……ランプからの粉は何もなく、周囲へ撒かれていた。
単純に加工すれば対魔獣用の武器にもなるが、粉にしてしまうとそうはいかない。
もったいないが……こちらの使い方のほうがきっといい。
しばらく粉をまくが、成果は出てこなかった。ううん、ここは外れみたい。
まぁ、ひとつ目の鉱山で成果が出るのは望みすぎか。
「次に行きましょう……!」
周囲の住民代表は落胆の表情を浮かべているが、私はへこたれない。
そんな暇はないからだ。成果を出ると賭けたことはやり抜くだけ。
駄目だったので次の鉱山に向かい、また試しては次の鉱山へ。
密集しているので試しやすくはあるが……朝からの作業ですでに日は傾き、夕方になろうとしていた。
……時間的に今日はここで最後か。とはいえ、まだまだヴォルデには鉱山はある。
オレンジ色の夕日に照らされながら、トルドが申し訳なさそうに私へ言った。
「コーデリア様にこれほどしてもらいましたのに……。ご足労をかけてばかりで」
「気にしないで」
私の屈託のない言葉にトルドが驚いたようだった。
「成果はすぐに出なくても、続けることが重要なのよ」
これは趣味の読書で学んだことだ。
読書は続けてページをめくらなければ進まない。ページを飛ばしながら読むことはできない。
もちろん世の中には急ぐべきこともあるが、ままならないこともある。
さて、明日も鉱山を回らなくては。効率の良いルートは――と、そこでルーインが叫んだ。
「イエティの粉末が! 引き寄せられています!」
ばっと振り向くと、夕陽に照らされた粉が不思議に一筋の煙となって鉱山の横の外壁に向かっている。本来の入り口からおよそ百五十メートル離れて、一か所にまとわりついていた。
「本で見た通りの反応だわ!」
イエティは山の魔力を取り込む。それが爪になった共鳴して反応しているのだ。
トルドが同行した住民たちに呼びかける。
「これは……うぉーい! 掘ってみるぞー!」
「おおおっー! やるぞー!」
住民はやる気だ。でもそろそろ夜になってしまう。
「ま、待って。明日でもいいんじゃないかしら。鉱脈は逃げないし……」
「いいえ! 引き寄せた運は掴み取らないと!」
トルドたちは馬車からツルハシなどを下ろすと、そのままイエティの粉が付着した岩壁を一斉に力強く掘り始めた。
猛烈な音がガンガンと鳴る。岩石がどんどんと削られていった。
「……いいのかしら」
「どうなんでしょう。よほどやりたいみたいですが……」
ルーインもあまりの熱気に困惑していた。
私が帝国から来た専門家に目を向けると、彼らも目を輝かせている。
「これほど反応しているということは、望みは大きいかと。岩壁が崩れる心配もなさそうですし、このまま進めてもらっても……」
「なるほどね……」
私は自分の知識が本主体であると認識している。
現場のことは現場に任せたほうがよさそうだ。
それでも……鉱脈のありそうなところを掘ったからって、すぐに結果が出るとは限らない。
「見ろ! ミスリルの鉱石だ! ぶち当たったぞー!」
「まだ残ってたのかー! やったぁぁっ!」
「えええっ!?」
私が歓声に驚くと、トルドが両腕に石の塊を抱えて持ってきた。
濃い茶色の石の裏に青みがかった水晶が広がっている。
これがミスリルの鉱石だ。
私よりも魔力への感覚が鋭いルーインがごくりと喉を鳴らす。
「魔力を感じます。本物ですね……」
「やったわね!」
はしたない程度に微笑み、ぐっと拳を握る。
側妃に降格されてから心労ばかりだった気がするけれど、ようやく前向きなことがあった。
トルドがシワの浮かんだ目尻に涙を浮かべている。
「まさかまだ、鉱脈が枯れていなかったとは……。鉱石の質も良いように思います」
きらめく青の断面は魔力によって揺れ動き、水面のようであった。
より揺れ動くほど良いとされ、かなりの品質が期待できる。だが、まだここは始まりだ。
「御礼を言うのはまだよ」
「えっ?」
「精錬までやらないとね。このままでは使えないし、そうでしょう?」
「確かに精錬まで可能ならさらなる利益が見込めるでしょう。しかし精錬施設も何十年前に閉鎖されているわけで」
「大丈夫よ。目処はついているわ!」
翌朝、まずイエティの素材を確認して……その後、諸々の資料を確認した。
その間に王都へもいくつか手紙を送る。内容は懇意にしている貴族や官僚に向けたもの。マイナスなことは書かず、相手を気遣うだけにしよう。
まだ色々と動くには早すぎる。
今はおとなしく情勢を見守って私は私にできることをやるしかない。
数日後、レオールから交易の推進について補助員がやってきた。主に山に関する専門家だ。
(本当にありがたいわ……)
それから私は改めてヴォルデの住民代表たちと会合を持った。
いずれにしてもヴォルデの民と協力しなければ、この地方に生息する魔獣の管理も進まない。
住民代表は体格のいいおじさんで、名前をトルドと言った。
茶色の髭に丸太のような腕の持ち主だ。
小さな眼鏡の下からカンペ丸読みで挨拶される。
「えー、栄光ある殿下のご尊顔におかれましては、夏の草木よりも――」
「……ごめんなさい、もっと砕けていいわ。呼び方も『コーデリア様』くらいで結構よ」
トルドと他の代表が目をぱちくりさせる。
「そーいうわけにも……」
「んだんだ。南では代官様への言葉遣いひとつでえらい目になると聞きましたぞ」
その話は初耳だ。私の隣のルーインも驚いている。
いや……でも南、ラッセリア公国の南部か。この前の話を総合すると、ディルダは公国南部と西部で好き勝手やっている。
ディルダの威光を盾に現地の住民に威張っていてもおかしくはない。
「私は大丈夫よ。気にしないわ」
「はぁ……ではそのように……」
怪訝な目で見られているが、硬さは少し取れた。
こういうところから交流を始めなければならない。
で、まず問題なのはヴォルデをどうするか……住民自体にも活気が見受けられない。それは長い間、半ば流刑地のような扱いであったからだ。
住民自身がやる気を出さなくては魔獣についてもどうにもできない。
今こそ私の知識を活かしてヴォルデの住民を奮い立たせなければ。
そのための情報を手を抱えて私はこの会談に臨んでいた。
「このヴォルデはかつて鉱山として有名な町でしたね?」
「まぁ、そりゃあ……。でもそれも何十年も前に衰えましたからなぁ」
トルドが懐かしそうに目を細める。
かつてヴォルデはラッセリアでも有数の鉱山地帯だった。魔獣へ有効な金属であるミスリルが産出されていたし。
だが徐々に採掘量が減り、採算が取れなくなってきて……私が生まれた頃の二十年ほど前に全鉱山が閉鎖されてしまった。
こうしてヴォルデからは誇りとなる産業が失われてしまった。
「さしあたり、ヴォルデ山脈の鉱山へ案内してもらえるかしら?」
「我々は構いませんが……」
トルドや住民の反応にはもう諦めの色があった。
今までも恐らく、このようなやり取りはあったのだろう。
中央からよくわからない人が来てはちょっと試し、成果が出ずに引き上げる。そのようなことの繰り返しだったに違いない。
ルーインを伴い、私たちは屋敷からヴォルデの北へと向かう。
ヴォルデ地方は雪冠の覆う山脈が取り囲む盆地だ。鉱山は山脈沿いに点在する。
イエティの爪や角、あとはツルハシなどの掘削道具も馬車に積み込み、何台もの馬車の列で北へと向かう。
移動中、ルーインがこそっと聞いてきた。
「ヴォルデ北部の鉱山は早くに枯れたところですよね?」
「ええ、そうね。本によると鉱山は北から順々に枯れていったとあるわ」
私は馬車に持ち込んだヴォルデ関連の本にぽんと手を置いた。
「でもそれからは……百年くらい放置されているわ。ただ、地道にやるしかないかも。イエティの素材が手に入って、できることも増えたしね」
北に近付くと山の冷気を感じる。夏なのに体感的には晩秋くらいの気温だ。
閉鎖された鉱山の前で馬車から降りる。トルドたちの前で私はイエティの爪を取り出した。
爪からはまだ氷の魔力が流れ出ている。
私に魔術の才はないけれど、普通の人でも魔力は感じ取れる。このイエティの爪の魔力は私にもわかるレベルだ。
イエティの爪を見て、トルドがはっと目を開いていた。
「それは……まさかイエティの骨か爪ですか?」
「イエティの爪よ。これでミスリルを探せるんじゃないかしら」
同行していた帝国の専門家たちも頷いていた。イエティは帝国にはいないが、魔獣の素材を活用する術は身につけている。
それに私も――帝国に留学していたし。ルーインや専門家に指示を出し、イエティの爪を砕いていく。
青色の爪が粉になり、風が吹くと魔力を帯びた冷気が漂う。
「イエティで鉱脈を探すなんて、何十年振りかのぅ……」
住民代表の中で最年長のおじいさんが杖をつきながら唸った。トルドがおじいさんに頷く。
「昔はよくやってたとか……本当に見つかるんですかい?」
「イエティは強力な魔獣じゃが、倒した恩恵も大きい。ヴォルデの鉱山も元はといえば魔獣を倒し、その素材を活用して見つけ出したものじゃからの」
レオールがあっさり倒したのだが、実はその通りでイエティはかなり強めの魔獣だ。
遠距離から仕留めるのが上策で、素材の回収も優先しない。
「コーデリア様はお若いのに、よくよく物事を存じておられるの」
「うぅむ、公国の才女という触れ込みは本当でございましたか」
聞こえてる聞こえてる。
恥ずかしいけれど……反発されるよりは受け入れてくれたほうがいいか。
ルーインがイエティの粉を手持ちランプに仕込む。ランプには四方に隙間があり、魔力が刻まれ微風を起こすようになっていた。
青白い粉がランプから少しずつ浮遊していく仕組みだ。
「では、始めますね!」
「お願いね」
ルーインを先頭に静かに鉱山へと近付いていく……ランプからの粉は何もなく、周囲へ撒かれていた。
単純に加工すれば対魔獣用の武器にもなるが、粉にしてしまうとそうはいかない。
もったいないが……こちらの使い方のほうがきっといい。
しばらく粉をまくが、成果は出てこなかった。ううん、ここは外れみたい。
まぁ、ひとつ目の鉱山で成果が出るのは望みすぎか。
「次に行きましょう……!」
周囲の住民代表は落胆の表情を浮かべているが、私はへこたれない。
そんな暇はないからだ。成果を出ると賭けたことはやり抜くだけ。
駄目だったので次の鉱山に向かい、また試しては次の鉱山へ。
密集しているので試しやすくはあるが……朝からの作業ですでに日は傾き、夕方になろうとしていた。
……時間的に今日はここで最後か。とはいえ、まだまだヴォルデには鉱山はある。
オレンジ色の夕日に照らされながら、トルドが申し訳なさそうに私へ言った。
「コーデリア様にこれほどしてもらいましたのに……。ご足労をかけてばかりで」
「気にしないで」
私の屈託のない言葉にトルドが驚いたようだった。
「成果はすぐに出なくても、続けることが重要なのよ」
これは趣味の読書で学んだことだ。
読書は続けてページをめくらなければ進まない。ページを飛ばしながら読むことはできない。
もちろん世の中には急ぐべきこともあるが、ままならないこともある。
さて、明日も鉱山を回らなくては。効率の良いルートは――と、そこでルーインが叫んだ。
「イエティの粉末が! 引き寄せられています!」
ばっと振り向くと、夕陽に照らされた粉が不思議に一筋の煙となって鉱山の横の外壁に向かっている。本来の入り口からおよそ百五十メートル離れて、一か所にまとわりついていた。
「本で見た通りの反応だわ!」
イエティは山の魔力を取り込む。それが爪になった共鳴して反応しているのだ。
トルドが同行した住民たちに呼びかける。
「これは……うぉーい! 掘ってみるぞー!」
「おおおっー! やるぞー!」
住民はやる気だ。でもそろそろ夜になってしまう。
「ま、待って。明日でもいいんじゃないかしら。鉱脈は逃げないし……」
「いいえ! 引き寄せた運は掴み取らないと!」
トルドたちは馬車からツルハシなどを下ろすと、そのままイエティの粉が付着した岩壁を一斉に力強く掘り始めた。
猛烈な音がガンガンと鳴る。岩石がどんどんと削られていった。
「……いいのかしら」
「どうなんでしょう。よほどやりたいみたいですが……」
ルーインもあまりの熱気に困惑していた。
私が帝国から来た専門家に目を向けると、彼らも目を輝かせている。
「これほど反応しているということは、望みは大きいかと。岩壁が崩れる心配もなさそうですし、このまま進めてもらっても……」
「なるほどね……」
私は自分の知識が本主体であると認識している。
現場のことは現場に任せたほうがよさそうだ。
それでも……鉱脈のありそうなところを掘ったからって、すぐに結果が出るとは限らない。
「見ろ! ミスリルの鉱石だ! ぶち当たったぞー!」
「まだ残ってたのかー! やったぁぁっ!」
「えええっ!?」
私が歓声に驚くと、トルドが両腕に石の塊を抱えて持ってきた。
濃い茶色の石の裏に青みがかった水晶が広がっている。
これがミスリルの鉱石だ。
私よりも魔力への感覚が鋭いルーインがごくりと喉を鳴らす。
「魔力を感じます。本物ですね……」
「やったわね!」
はしたない程度に微笑み、ぐっと拳を握る。
側妃に降格されてから心労ばかりだった気がするけれど、ようやく前向きなことがあった。
トルドがシワの浮かんだ目尻に涙を浮かべている。
「まさかまだ、鉱脈が枯れていなかったとは……。鉱石の質も良いように思います」
きらめく青の断面は魔力によって揺れ動き、水面のようであった。
より揺れ動くほど良いとされ、かなりの品質が期待できる。だが、まだここは始まりだ。
「御礼を言うのはまだよ」
「えっ?」
「精錬までやらないとね。このままでは使えないし、そうでしょう?」
「確かに精錬まで可能ならさらなる利益が見込めるでしょう。しかし精錬施設も何十年前に閉鎖されているわけで」
「大丈夫よ。目処はついているわ!」