紫陽花の短編集物語#2
2年B組、ふたりのヒナタ
第1話 転校生、日葵(ひなた)
2年B組に転校してきた少女――日葵(ひなた)。
その瞬間、教室がざわついた。絵に描いたような美貌。それに反してボロボロの制服。
誰よりも整っていて、誰よりも貧しい。
一方、クラスの中心にいたのは“もうひとりのひなた”、雛(ひなた)。
財閥のお嬢様、絶対的な権力者、そして――超絶不細工と言われるほどの容姿。
だけど、雛には誰にも負けない愛を注ぐ相手がいた。
奏(かなた)――同じ2年B組で、スポーツも勉強も完璧な“憧れ男子”。
日葵が入ってきたその日、奏は言った。
「…キミ、可愛いな」
雛の世界が、音を立てて崩れた瞬間だった。
【2年B組、ふたりのヒナタ】
第2話 奏の優しさ、昴のまなざし
「可愛いな」
教室の空気が一瞬止まった――奏の言葉。それは日葵に向けられた、たった一言。
雛の心臓はドクドクと鳴った。奏に言われたかったその言葉。
“私じゃない…”
見慣れた教室が、まるで別世界のように感じた。
その頃、日葵は戸惑っていた。 彼女は“可愛い”と言われることに慣れていた――でも、嬉しいとは限らない。
奏の視線は柔らかく、優しく、そして…どこか距離があるように感じた。
放課後。中庭に向かった日葵。ひとりでいたくて。 そこに、もうひとりの男子――昴(すばる)がいた。
物静かで誰にも深入りしない昴。だけど、彼は日葵を見ると、一言こう言った。
「…君、雛と話してたのか?」
その目には、日葵ではなく“雛”を映していた。
日葵は思った。
“どうして、私の好きな人は、あの子を見てるの?”
奏→日葵
日葵→昴
昴→雛
雛→奏
この複雑な感情の矢印は、まだ誰も正解を知らない。
【2年B組、ふたりのヒナタ】
第3話 日葵と雛、はじめての会話
「ねえ、ひなたって呼ばれたことある?」
昼休み。屋上の隅で、日葵が声をかけた。
雛は振り返りもせず、ジュースのストローをくわえたまま答えた。
「あるけど…だいたい、笑われるから好きじゃない。」
その一言に、日葵は少しだけ目を細める。
同じ“ひなた”という名前、でも過ごしてきた時間も周囲の反応も、まるで違う世界。
「奏くんのこと、好きなんだよね?」
突然の問い。雛の手が止まった。
「……何それ、言ってないし」
けど、顔が赤くなっているのは隠しきれなかった。
「私も昴くんが好き。でも、昴くんは…あなたを見てる」
日葵の声は静かだった。でもその眼差しは、雛の胸の奥にまっすぐ突き刺さった。
屋上の風が、ふたりの髪をそっと揺らす。
“ひなた”という名前を持つふたりの距離が、ほんの少しだけ近づいたような気がした。
でも、友情にはまだ早すぎた。
この関係は、きっとこれから何度も揺れて、壊れて、そして形を変えていく。
【2年B組、ふたりのヒナタ】
第4話 それぞれの“好き”に触れる瞬間
翌朝、雛は日葵の席をちらりと見た。
あの完璧な横顔が、なぜか昨日より遠く感じる。
一方、昴は廊下で日葵に声をかけた。
「昨日、雛と話してたよね。……あの子、意外といいヤツだよ」
そう言って、ふっと笑う。その笑顔に日葵の鼓動が跳ねた。
でも、その“ふっとした優しさ”が――日葵に向けられたものじゃないと、すぐに気づいてしまう。
昴の瞳の中には、やっぱり雛がいた。
昼休み。雛は奏の机にそっと近づく。
「…ねえ、私って面白い?可愛いとか、ないけどさ」
奏は少し驚いた顔で、でもすぐに優しく言った。
「雛は…強いよな。俺、そういうとこ尊敬してる」
雛はその言葉に、笑ったふりをした。
でも、欲しかったのは“強い”じゃなかった。“好き”だった。
午後、教室の窓から差し込む陽射しの中で、日葵と雛はまたすれ違った。
ほんの一瞬だけ、視線が重なる。何も言わずに。
――誰かを好きになることって、こんなに、苦しくて優しいんだ。
ふたりの“ヒナタ”が、初めて同じ気持ちに触れていた。
【2年B組、ふたりのヒナタ】
第5話 嫉妬という名のボタンが押された
「今度の日曜、部活終わったら少しだけ寄り道しない?」
昴のその言葉に、日葵は一瞬だけ固まった。
まさか、自分を誘ってる――?
けれど昴が見ていたのは、日葵の背後にいた雛だった。
雛は戸惑いながらもうなずいた。
「…え、うん。いいよ」
日葵の胸がキュッと縮む。
わかってたはずなのに、期待してしまった自分が悔しい。
昴の優しさは、いつも雛に向かっていた。
その午後、奏が日葵の机を指でトントンと叩いた。
「昨日のノート、ちょっと見せてくれない?」
彼女が「いいよ」と差し出した瞬間――ふたりの距離は、予想以上に近かった。
雛は、それを見ていた。
その“距離”が、彼女の胸の奥を押した。ぐいっと。
放課後。昴と雛が校門を歩いて出ていく。
その後ろ姿を見つめながら、日葵はポツリと呟いた。
「…いいな」
そして、振り向いた雛はその言葉を聞いた。
何も言わず、ただ前を向いて歩き続けたが、
胸の中では、何かが“カチッ”と音を立てて押された気がした。
“嫉妬”という名のボタンだった。
【2年B組、ふたりのヒナタ】
第6話 私より、あの子を見ていたんだね
日曜の寄り道――昴と雛は、駅前のカフェに入っていた。
アイスココアを吸いながら、雛はいつもより口数が少なかった。
昴は気づいていた。「疲れてる?」と尋ねると、雛は首を横に振った。
「…なんで、私なんだろ」
ぼそっと漏れたその言葉に、昴の手が一瞬止まる。
「俺、雛だからだよ。日葵みたいに顔が整ってても、俺にはきっと怖いだけだ」
それは昴なりの優しさ。だけど、雛の心には痛みになって届いた。
“それって…本当に好きってことなの?”
その頃、日葵は家でひとり、壊れかけたイヤホンを繋ぎ直していた。
奏から借りたCDプレイヤーには、彼が好きなバンドの曲が流れていた。
だけど、日葵の頭に浮かぶのは、昴と雛のカフェの会話だった。
翌日、教室。
昴と雛が並んで登校してきたのを見て、日葵の心が少しざわめいた。
そしてその後ろから遅れてやってきた奏は、日葵に笑いかけて言った。
「昨日の曲、どうだった?」
日葵はうなずいた。
「…よかった。すごく」
それでもその笑顔は、どこかすれ違っていた。
日葵が見たいのは昴の顔。
雛が見たいのは奏の顔。
でもふたりの大切な“人”は、あの子を見ている。
“私より、あの子を見ていたんだね。”
それが、どちらのヒナタにも突き刺さる現実だった。
【2年B組、ふたりのヒナタ】
第7話 雛の涙、誰も知らない夜
帰宅後、雛は自室の鏡の前に立った。
制服のまま、表情を隠すようにマフラーを外す。
誰にも見せたことのない顔が、そこに映っていた。
「…いいな、日葵は。顔も、雰囲気も」
ポツリとこぼれた言葉に、鏡の中の自分がじっと見返してくる。
スマホには昴とのカフェの写真が一枚。
自撮りではなく、遠くから撮られたふたりの後ろ姿。撮ったのは奏だった。
「いい感じじゃん」って、送られてきたメッセージが添えられていた。
雛は苦笑した。
“違うんだよ、それじゃない。昴に見てほしいのは、私の心なの。”
夜、机に突っ伏したまま涙が落ちた。誰も知らない涙。
「もし私が、日葵みたいな顔だったら。もし、普通に可愛かったら」
想像だけが彼女を支えていた。
でも――心のどこかではわかっていた。
“それだけじゃ、好きにはなってもらえない”ってこと。
カーテンの向こうで冬の風が唸っていた。
雛の心もまた、強がりと弱さの境界線を震えていた。
この涙が誰にも届かないことを、雛は知っていた。
だからこそ、自分が一番見てあげたかった。
「雛、おかえりー!」
廊下の奥から聞こえる母の明るい声。
雛は涙をぬぐって、笑顔のふりをして返事をした。
「…ただいま」
【2年B組、ふたりのヒナタ】
最終話 私はあなたになれないけど。
奏→日葵
日葵→昴
昴→雛
雛→奏
この恋は一生叶わない。
だって、好きな人には好きな人がいるのだから。
でも、自分には自分の良さがある。
だから、自分を信じて、前に進んで!
お願い。みんな! 自信を持ってね!
この物語は自分をもっと好きになってもらいたいなと思い、作成しました。
【2年B組、ふたりのヒナタ 完】
2年B組に転校してきた少女――日葵(ひなた)。
その瞬間、教室がざわついた。絵に描いたような美貌。それに反してボロボロの制服。
誰よりも整っていて、誰よりも貧しい。
一方、クラスの中心にいたのは“もうひとりのひなた”、雛(ひなた)。
財閥のお嬢様、絶対的な権力者、そして――超絶不細工と言われるほどの容姿。
だけど、雛には誰にも負けない愛を注ぐ相手がいた。
奏(かなた)――同じ2年B組で、スポーツも勉強も完璧な“憧れ男子”。
日葵が入ってきたその日、奏は言った。
「…キミ、可愛いな」
雛の世界が、音を立てて崩れた瞬間だった。
【2年B組、ふたりのヒナタ】
第2話 奏の優しさ、昴のまなざし
「可愛いな」
教室の空気が一瞬止まった――奏の言葉。それは日葵に向けられた、たった一言。
雛の心臓はドクドクと鳴った。奏に言われたかったその言葉。
“私じゃない…”
見慣れた教室が、まるで別世界のように感じた。
その頃、日葵は戸惑っていた。 彼女は“可愛い”と言われることに慣れていた――でも、嬉しいとは限らない。
奏の視線は柔らかく、優しく、そして…どこか距離があるように感じた。
放課後。中庭に向かった日葵。ひとりでいたくて。 そこに、もうひとりの男子――昴(すばる)がいた。
物静かで誰にも深入りしない昴。だけど、彼は日葵を見ると、一言こう言った。
「…君、雛と話してたのか?」
その目には、日葵ではなく“雛”を映していた。
日葵は思った。
“どうして、私の好きな人は、あの子を見てるの?”
奏→日葵
日葵→昴
昴→雛
雛→奏
この複雑な感情の矢印は、まだ誰も正解を知らない。
【2年B組、ふたりのヒナタ】
第3話 日葵と雛、はじめての会話
「ねえ、ひなたって呼ばれたことある?」
昼休み。屋上の隅で、日葵が声をかけた。
雛は振り返りもせず、ジュースのストローをくわえたまま答えた。
「あるけど…だいたい、笑われるから好きじゃない。」
その一言に、日葵は少しだけ目を細める。
同じ“ひなた”という名前、でも過ごしてきた時間も周囲の反応も、まるで違う世界。
「奏くんのこと、好きなんだよね?」
突然の問い。雛の手が止まった。
「……何それ、言ってないし」
けど、顔が赤くなっているのは隠しきれなかった。
「私も昴くんが好き。でも、昴くんは…あなたを見てる」
日葵の声は静かだった。でもその眼差しは、雛の胸の奥にまっすぐ突き刺さった。
屋上の風が、ふたりの髪をそっと揺らす。
“ひなた”という名前を持つふたりの距離が、ほんの少しだけ近づいたような気がした。
でも、友情にはまだ早すぎた。
この関係は、きっとこれから何度も揺れて、壊れて、そして形を変えていく。
【2年B組、ふたりのヒナタ】
第4話 それぞれの“好き”に触れる瞬間
翌朝、雛は日葵の席をちらりと見た。
あの完璧な横顔が、なぜか昨日より遠く感じる。
一方、昴は廊下で日葵に声をかけた。
「昨日、雛と話してたよね。……あの子、意外といいヤツだよ」
そう言って、ふっと笑う。その笑顔に日葵の鼓動が跳ねた。
でも、その“ふっとした優しさ”が――日葵に向けられたものじゃないと、すぐに気づいてしまう。
昴の瞳の中には、やっぱり雛がいた。
昼休み。雛は奏の机にそっと近づく。
「…ねえ、私って面白い?可愛いとか、ないけどさ」
奏は少し驚いた顔で、でもすぐに優しく言った。
「雛は…強いよな。俺、そういうとこ尊敬してる」
雛はその言葉に、笑ったふりをした。
でも、欲しかったのは“強い”じゃなかった。“好き”だった。
午後、教室の窓から差し込む陽射しの中で、日葵と雛はまたすれ違った。
ほんの一瞬だけ、視線が重なる。何も言わずに。
――誰かを好きになることって、こんなに、苦しくて優しいんだ。
ふたりの“ヒナタ”が、初めて同じ気持ちに触れていた。
【2年B組、ふたりのヒナタ】
第5話 嫉妬という名のボタンが押された
「今度の日曜、部活終わったら少しだけ寄り道しない?」
昴のその言葉に、日葵は一瞬だけ固まった。
まさか、自分を誘ってる――?
けれど昴が見ていたのは、日葵の背後にいた雛だった。
雛は戸惑いながらもうなずいた。
「…え、うん。いいよ」
日葵の胸がキュッと縮む。
わかってたはずなのに、期待してしまった自分が悔しい。
昴の優しさは、いつも雛に向かっていた。
その午後、奏が日葵の机を指でトントンと叩いた。
「昨日のノート、ちょっと見せてくれない?」
彼女が「いいよ」と差し出した瞬間――ふたりの距離は、予想以上に近かった。
雛は、それを見ていた。
その“距離”が、彼女の胸の奥を押した。ぐいっと。
放課後。昴と雛が校門を歩いて出ていく。
その後ろ姿を見つめながら、日葵はポツリと呟いた。
「…いいな」
そして、振り向いた雛はその言葉を聞いた。
何も言わず、ただ前を向いて歩き続けたが、
胸の中では、何かが“カチッ”と音を立てて押された気がした。
“嫉妬”という名のボタンだった。
【2年B組、ふたりのヒナタ】
第6話 私より、あの子を見ていたんだね
日曜の寄り道――昴と雛は、駅前のカフェに入っていた。
アイスココアを吸いながら、雛はいつもより口数が少なかった。
昴は気づいていた。「疲れてる?」と尋ねると、雛は首を横に振った。
「…なんで、私なんだろ」
ぼそっと漏れたその言葉に、昴の手が一瞬止まる。
「俺、雛だからだよ。日葵みたいに顔が整ってても、俺にはきっと怖いだけだ」
それは昴なりの優しさ。だけど、雛の心には痛みになって届いた。
“それって…本当に好きってことなの?”
その頃、日葵は家でひとり、壊れかけたイヤホンを繋ぎ直していた。
奏から借りたCDプレイヤーには、彼が好きなバンドの曲が流れていた。
だけど、日葵の頭に浮かぶのは、昴と雛のカフェの会話だった。
翌日、教室。
昴と雛が並んで登校してきたのを見て、日葵の心が少しざわめいた。
そしてその後ろから遅れてやってきた奏は、日葵に笑いかけて言った。
「昨日の曲、どうだった?」
日葵はうなずいた。
「…よかった。すごく」
それでもその笑顔は、どこかすれ違っていた。
日葵が見たいのは昴の顔。
雛が見たいのは奏の顔。
でもふたりの大切な“人”は、あの子を見ている。
“私より、あの子を見ていたんだね。”
それが、どちらのヒナタにも突き刺さる現実だった。
【2年B組、ふたりのヒナタ】
第7話 雛の涙、誰も知らない夜
帰宅後、雛は自室の鏡の前に立った。
制服のまま、表情を隠すようにマフラーを外す。
誰にも見せたことのない顔が、そこに映っていた。
「…いいな、日葵は。顔も、雰囲気も」
ポツリとこぼれた言葉に、鏡の中の自分がじっと見返してくる。
スマホには昴とのカフェの写真が一枚。
自撮りではなく、遠くから撮られたふたりの後ろ姿。撮ったのは奏だった。
「いい感じじゃん」って、送られてきたメッセージが添えられていた。
雛は苦笑した。
“違うんだよ、それじゃない。昴に見てほしいのは、私の心なの。”
夜、机に突っ伏したまま涙が落ちた。誰も知らない涙。
「もし私が、日葵みたいな顔だったら。もし、普通に可愛かったら」
想像だけが彼女を支えていた。
でも――心のどこかではわかっていた。
“それだけじゃ、好きにはなってもらえない”ってこと。
カーテンの向こうで冬の風が唸っていた。
雛の心もまた、強がりと弱さの境界線を震えていた。
この涙が誰にも届かないことを、雛は知っていた。
だからこそ、自分が一番見てあげたかった。
「雛、おかえりー!」
廊下の奥から聞こえる母の明るい声。
雛は涙をぬぐって、笑顔のふりをして返事をした。
「…ただいま」
【2年B組、ふたりのヒナタ】
最終話 私はあなたになれないけど。
奏→日葵
日葵→昴
昴→雛
雛→奏
この恋は一生叶わない。
だって、好きな人には好きな人がいるのだから。
でも、自分には自分の良さがある。
だから、自分を信じて、前に進んで!
お願い。みんな! 自信を持ってね!
この物語は自分をもっと好きになってもらいたいなと思い、作成しました。
【2年B組、ふたりのヒナタ 完】