クールなパティシエが見せる笑顔は私にだけとびきり甘い
「えぇ……」

「間違ってた?」

「うーん」

私は少し考える。そして彼の頬を指差した。

「私は昔みたいにニコニコしてて、ここにえくぼが出るのが好き」

ふゆくんがぴたりと固まった。

「え、そうなの?」

「うん」

即答する。

「それにね。えくぼができる人って、『前世の愛する人や大切な人の記憶を忘れないよう、試練に耐えて生まれ変わってきた人』って言い伝えがあるらしいよ?」

「へぇ」

「ロマンチックだよね?」

そう言うと、ふゆくんはなぜか視線を逸らした。

「そ、そっかー」

ぽりぽりと頬をかく。
なんだか少し落ち着かない様子だ。
しばらくして、私は気になっていたことを口にした。

「それより……なんで言ってくれなかったの?」

「ん?」

「気づいてたんでしょ?」

するとふゆくんは苦笑した。

「うん。ケーキ屋に来てくれたとき、花蓮ちゃんだってすぐ分かった」

「やっぱり」

「でもさ」

ふゆくんは肩をすくめる。

「初めて来たときホールケーキ買っていったし、そのあとも毎回二、三個ずつ買っていくから」

そこで一度言葉を切った。

「てっきり彼氏がいるんだと思ってた」

「えぇ!?」

思わず大声が出る。

「なんで!?」

「いや、普通そう思わない?」

ふゆくんは呆れたように笑う。

「それならさすがに遠慮するよ」

そう言って視線を落とした。

「好きな人が幸せなら、それでいいかなって思ってたし」

その言葉に胸がきゅっとなる。
そんな風に思ってくれていたなんて。
全然知らなかった。

「でも」

ふゆくんが顔を上げる。
優しい目だった。

「彼氏いないって分かったとき、正直すごく嬉しかった」

そう言って照れくさそうに笑う。
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