拳にモノを言わせますけどよろしくて?
  ✻


 その肖像画の片づけは裏目に出た。リュティシアがエドゥアルドと居間にいる間に備品室へ運んでしまおうとしたヴァルターの思惑に反し、二人が部屋を出てきてしまったのだ。

「かくれんぼだよ! お母さまがかくれるの!」

 そう言って壁に顔を伏せようとしたエドゥアルドは、廊下の向こうで額縁を運ぶ下男二人にもちろん気づく。

「あ、それ――」

 エドゥアルドはその肖像の人をなんと呼ぶか迷ってしまった。父の部屋にあるそれのこと、前は「お母さまの絵だよ」と言われていたが。

「え、と。おかあ、さま――?」
「どうしたのエディ」

 今のエドゥアルドの「母」は、ここにいるリュティシアだ。男の子の混乱はリュティシアの眉をひそめさせる。肖像画に付き添っていたヴァルターは頭を抱えたくなった。

「リュティシアさま、あの、これはですね」
「もしかして、以前の奥さま――」

 布にくるまれていないその絵に近づいて、リュティシアはしげしげとながめた。
 エドゥアルドと同じ瞳。おとなしそうで気弱な微笑み。なるほど、着実で誠実なフェリスベルトとなら静かな夫婦関係を築いただろうと思わされる。

「リュティシアさま、こちらは片づけるようにと命じられたものでして……申し訳ありません、倉庫に移してから梱包しようと思っていたのです」

 言い訳するヴァルターの言葉に応えもせずに、リュティシアはその女性に想いを馳せていた。


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