拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「エディはだいじょうぶかしら……」

 つぶやいたら、表でノックがした。ユーニスが出ていく。聞こえたのは意外にもフェリスベルトの声だった。

「リュティに会いたいのだが、話せるかな」
「……フェルさま?」

 執務室で仕事のはずなのに、どうしたのか。思わず立ち上がったら居間のドアをそっとユーニスがのぞく。

「お通ししても?」
「もちろんよ。何かあったのでしょうし」
「いや、リュティに謝りたくて来たんだよ」

 ユーニスを押しのけて入ってきたフェリスベルトは、そのままドアを閉めた。二人きりになる。とりあえずソファをすすめ、リュティシアも腰をおろした。フェリスベルトのぶんのカップがないな、とぼんやり考えた。

「リュティを傷つけた。すまない」

 単刀直入にフェリスベルトが言う。深く頭を下げられてリュティシアは慌てた。

「傷つけただなんて……」
「でも肖像画を見て不安になったんだろう? ヴァルターから表の方に連絡があってね。あれはもっと早く片づけておくべきだった。私のミスだ」

 フェリスベルトは真っ直ぐにリュティシアの瞳をのぞき込む。配慮したつもりがこの始末で、「真夜中にやらせればよかった」と本気で後悔している。

「あれはずっと私の私室に飾ってあったんだ。エディに母親というものを少しでも感じさせたくて。でもリュティが来てくれて必要なくなった。今はリュティがいてくれればそれでいいんだ。すぐ取り外せばよかったんだが……もう私にとっては壁と同じようなものだったから忘れていてね」
「フェルさま」

 その言い方にリュティシアは青ざめた。心が凍りつく。
 フェリスベルトは言い訳として大げさに言ったのかもしれない。だが命がけでエドゥアルドを生んでくれた人に対して――。

「失礼じゃありませんこと?」

 底冷えするような声が出た。

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