拳にモノを言わせますけどよろしくて?
氷点下なリュティシアの視線を受けてフェリスベルトが硬直する。誰に対して「失礼」なのか、はかりかねた。
「リュ、ティ……?」
「エディのお母さまは元々あの方ですのよ。それを、壁ですって?」
「あ……いや、その」
「必要とか必要ないとか、そんな風にご家族のことを判断しますの? なら私のことも子育てに必要なくなれば離縁なさいます?」
「いやまさか、リュティをそんな」
「でもだってだって……! あの方はどんなに無念だったか……エディみたいな可愛い子、きっとお育てになりたかったでしょうに……!」
リュティシアはポロポロと泣き出してしまった。もう自分でもわけがわからなかった。
最初は不安だったのだと思う。フェリスベルトに愛されていた、今でも愛されているかもしれない女性の存在に心がかき乱された。その人を排除してリュティシアが割り込んでいいのか、自分はうまくやっていけるのか心配だった。
でもフェリスベルトがひどいことを言ったせいで全部吹っ飛んだのだ。
リュティシアは弱い者がないがしろにされるのが何より嫌い。亡くなった女性だなんて、みずからは抗弁することも叶わない究極の弱者だ。
それを「もういらない」だなんて!
「お帰りになって! 今はフェルさまとお話しできませんことよ!」
泣きながらドアを指差すリュティシアに圧倒されて、フェリスベルトはヨロヨロ追い出されていった。