拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「エディ……」
「あのね、ぼくね、お母さまがいるから、()はいらないってお父さまにいったの」

 小さな手でリュティシアの背中をきゅっとするエドゥアルドにハッとした。フェリスベルトがそんな風に言ったのは、エドゥアルドの言葉を受けてのものだったのか。きつい口調で追い出したことを後悔する。
 でも亡くなった人のことをかばわなければとも思った。この可愛いエドゥアルドを産んでくれた人はリュティシアにとっても恩人だ。不必要なんかじゃない。

「……絵のお母さまは、エディのお母さまなのよ?」
「そうだよね。でもぼく、ルティ(・・・)お母さまがいい。ぎゅってできるもん」

 腕の中の小さな男の子の背をリュティシアはポンポンとする。肖像画の人にはしてもらえない、優しい抱擁――エドゥアルドが求めているのはそれだった。
 養育係はいても、「母」ではない。何かしら満たされずにいたエドゥアルドが望んだのはリュティシアのやわらかい腕なのだ。こんないじらしい子を置いてガルディアに帰ろうと考えたなんて、さっきの自分はなんて馬鹿だったのか。

「――もうエディったら。お母さまがいくらでもギュウッてしてあげるんだから!」
「ぼくも、むぎゅってする!」

 頬ずりし合って、二人は笑った。でもそのことがエディは不思議そう。大泣きしたと聞いたのに、リュティシアはもう笑っているから。

「お母さま、げんきでたの?」
「ええ。エディのおかげね、大好きよ」
「……お父さまのことは、すき?」

 あどけなく核心に切り込まれて、リュティシアは黙った。不意打ちの質問にキュウッとして耳まで赤くなってしまう。
 エドゥアルドは返事をしてくれない母のことを小首をかしげて見ていたが、「まあいいや」と体を離した。

「ぼくかえらなきゃ。おこられちゃうかなあ……」
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