拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 リュティシアは本国で愛されていた。両親と兄姉たち、臣下の皆。揚げ足を取ろうと狙う連中などいなかった。それにもし物理的に危険な目にあったとしても、加護を発動してぶっ飛ばせばいい。なのでリュティシア本人は油断しまくりで生きてきたのだった。
 だがここはアルヴェイン。王族に嫁ぐべくやってきた隣国の姫に対し、どこから反感が出るかわからない。自衛のためには付け入る隙を与えてはならないのだ。

「今日で皆さまの顔は覚えたから、だいじょうぶ。欠席なさったのはエリセテ太后さまだけよね」
「控えめな方のようですね。今の陛下の母君ではありませんし、いろいろ遠慮なさっているのかもしれません」
「あと、フェリスベルトさまの奥さまは……王族のリストになかった気がするけど」
「お亡くなりだそうです。エドゥアルドさまをお産みになった時に」

 ぽろ。
 リュティシアのフォークから肉が落ちた。とんだ無作法にユーニスがため息をつくが、リュティシアは瞳を揺らして愛らしいエドゥアルドを思い出していた。

(――お母さまを知らないのね。でも元気で利発で、お父さまと仲が良さそうで。ああなんて健気なの!)

 末姫として育ったため、リュティシアはいつもお世話される側だった。だが近年になり甥や姪が生まれ、赤ちゃんや幼児の可愛さにメロメロになっている。
 エドゥアルドは一番大きな甥よりもちょっと下で、幼さを残しつつ成長いちじるしいお年頃。

「ああもう! 抱きしめてあげたい!」
「……つぶしちゃ駄目ですよ」
「剛力は発動しないでやるから!」

 エドゥアルドとお近づきになりたくて、リュティシアは身もだえした。


< 11 / 79 >

この作品をシェア

pagetop