拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「日暮れが遅い季節だ。ちょうど夕焼けているよ、ながめに行こう」
「行ってらっしゃいませリュティさま」
ユーニスも平然と言う。全員から退路を断たれてしまい、仕方なくリュティシアは歩き出した。釈然としない。
「――私の言い方は、間違っていた」
そうささやいたフェリスベルトはリュティシアの手を握って離さなかった。コツ、コツと廊下に足音が響く。
「前の妻を否定するつもりはなかったよ。あの人がいてくれたこと、エディを産んでくれたことにはとても感謝している」
「――絵はいらない、とエディが言いましたわ。そうフェルさまに伝えたのだと」
「ああ。でも私は――」
話しながら庭へ通じる回廊へと曲がる。流れ込んできた夕陽にリュティシアは目を細めた。蜂蜜色の髪が陽にとけて輝く。フェリスベルトは思わずそれに手を触れたくなって自制した。
「――リュティへ遠回しに強調していたんだと思う。今の私とエディが大切に思っているのはリュティだけで、だから肖像画など不要だと。何かをおとしめることでリュティの方を持ち上げるのは良くない論法だった。すまない」
庭へリュティシアを連れ出しながら、フェリスベルトは婚約者の横顔を盗み見る。かすかにはれたまぶたが痛々しくて、でも愛らしくて、泣かせてしまったことがとんでもない罪のように思えた。
「フェルさまったら――」
目を伏せたまま花々に囲まれていたリュティシアの口から、ようやくこぼれた言葉は不満げだった。プンプンと文句を言う。
「どうして、そんなに頭がよろしいのよ、もう!」
「え? リュティ?」
「行ってらっしゃいませリュティさま」
ユーニスも平然と言う。全員から退路を断たれてしまい、仕方なくリュティシアは歩き出した。釈然としない。
「――私の言い方は、間違っていた」
そうささやいたフェリスベルトはリュティシアの手を握って離さなかった。コツ、コツと廊下に足音が響く。
「前の妻を否定するつもりはなかったよ。あの人がいてくれたこと、エディを産んでくれたことにはとても感謝している」
「――絵はいらない、とエディが言いましたわ。そうフェルさまに伝えたのだと」
「ああ。でも私は――」
話しながら庭へ通じる回廊へと曲がる。流れ込んできた夕陽にリュティシアは目を細めた。蜂蜜色の髪が陽にとけて輝く。フェリスベルトは思わずそれに手を触れたくなって自制した。
「――リュティへ遠回しに強調していたんだと思う。今の私とエディが大切に思っているのはリュティだけで、だから肖像画など不要だと。何かをおとしめることでリュティの方を持ち上げるのは良くない論法だった。すまない」
庭へリュティシアを連れ出しながら、フェリスベルトは婚約者の横顔を盗み見る。かすかにはれたまぶたが痛々しくて、でも愛らしくて、泣かせてしまったことがとんでもない罪のように思えた。
「フェルさまったら――」
目を伏せたまま花々に囲まれていたリュティシアの口から、ようやくこぼれた言葉は不満げだった。プンプンと文句を言う。
「どうして、そんなに頭がよろしいのよ、もう!」
「え? リュティ?」