拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「これからの私が愛したいのはリュティだ。あなたを、愛させてほしい」
「あ――――」
 
 愛。
 その言葉の意味は、とても広いのだが。リュティシアの脳みそがすごい速度で回転した。

(どういう意味? 王弟一家という集団を維持する要員として? 家族愛? ……ってことよね!)

 勝手に納得したリュティシアはスカートをつまみ、完璧な礼をしてみせた。

「ありがとうございます。私、安心してフェルさまと結婚いたしますわ」
「リュティ……」

 口ごもって、フェリスベルトは不安にかられた。何かがすれ違っている気がする。
 だがリュティシアは「結婚する」と明言した。この流れでそう言うからにはフェリスベルトからの愛を受け入れるとの意味なのだろう。今現在、恋してもらえているとは微塵も思えないが――愛なら今後育んでいけばいい。
 フェリスベルトは覚悟を決めた。普段から女性にモテるような自分ではないが、リュティシアの心をガッチリ手に入れるために努力するのだ!

「それでは、末永くよろしく」

 フェリスベルトはスッとリュティシアの手を取った。そして静かに口づける。
 それは誓い。愛の。
 リュティシアに愛を乞う、許しを求めての。

「フェ、フェルさま――!」

 リュティシアは驚いて手を引きそうになってしまう。しかしフェリスベルトはゆったり微笑み、愛しい婚約者を離さなかった。
 そしてリュティシアも、うっかり〈剛力〉を発動してフェリスベルトを投げ飛ばすなんてことにはならない。驚いてビクッとはしたが――なぜか口づけが嫌だとは思わなかったのだ。

< 113 / 170 >

この作品をシェア

pagetop