拳にモノを言わせますけどよろしくて?
時には昔の話を

15 夏至の祭にて

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 間もなく夏至。祭の支度で街にはソワソワした空気が満ちていた。
 夏至は太陽へ感謝の祈りを捧げる日だ。人々は家の窓に祝いのオーナメントをぶら下げる。いつもは市場が開かれている広場にはポールを立てて旗を飾り、その周りで踊るのも楽しいものだ。
 もちろん屋台が出るので大人も子どもも飲み食いして騒ぐ。そんな雰囲気にまぎれて恋を告白する男女も多かった。


 祭の到来を直前にして、宮廷をひとつの報せが駆けめぐった。第二王子セミオンとアデリア・モンサント侯爵令嬢の婚約が内定したというのだ。

「なんだと……?」

 聞いてこめかみに青筋を立てたのは、王太子のパルミロだった。
 兄弟の婚約、しかも一度婚約破棄をしでかした弟が幸せをつかむというなら喜ぶべきなのだが、パルミロにはできない。いまだに妃フロリアーナに懐妊の兆候がないからだ。
 アデリアとセミオンの方へ先に子ができたら――モンサント侯爵が陰であざ笑うことだろう。王位はもらった、と。

「……っ!」

 パルミロはギリッと奥歯を鳴らした。
 フロリアーナの前で、パルミロは優しさを崩さない。子ができないことではフロリアーナの方が悩んでいると思うから。だが宮廷の表で貴族たちから探りを入れられ憐れまれるパルミロも、限界が近かった。

「――ジェレミアスを呼んでくれ」

 だから晶化術に頼るのは仕方ない。心の澱を結晶化し、取りのぞかなくては。

「最近は、それでもモヤモヤが晴れぬ……」

 ジェレミアスを頼る頻度は上がっている。だがそれでもパルミロの心はスッキリしなかった。どれほど自分は焦り、弟を妬んでいるのだろうか。必ずしも成果をあげずとも気楽に生きられる第二王子という立場がうらやましかった。

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