拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「お母さま、おどろ!」

 エドゥアルドは無邪気に誘う。
 広場の端では町民たちが得意の楽器を持ち寄って即席の楽団を結成していた。ところどころ調子っぱずれになる曲に乗り、人々が手を取り合う。リュティシアもウズウズしてきて、婚約者に許可を求めた。

「踊ってきてもよろしくて?」
「……いや、私も行こう」

 フェリスベルトはリュティシアとエドゥアルドをまとめて三角旗の下に連れ出した。一瞬目をまるくしたリュティシアが満面の笑みになる。飛び入り参加の王弟一家に周囲がやんやと喝采した。リュティシアは足を交互に踏み出して踊りながら笑いこけてしまった。

「これ、初めての踊りですわ!」
「う、うん、私もだ」
「ピョンピョンして、おもしろいね!」

 隣と腕を組み、両脚でステップ。右に動いたかと思うと今度は左。フェリスベルトのぎこちなさが際立ち、応援の手拍子が起こる。
 二人でクルクル回るところではエディが両親をくっつけて得意げにした。子どもにとって親が仲良くしているのは何よりの幸せだから。
 奇しくも演奏されているこの曲は、長年連れ添った夫婦の仲の良さをからかう歌。そんな風になりたいとの願いをこめて皆が参加するのだった。

「ふぅ……ああ楽しかった!」

 曲が終わってリュティシアは、ちょんとカーテシーでフェリスベルトに一礼した。こんな庶民のようなことをさせてしまって申し訳なかったから。
 すると踊っていたカップルがあちこちで軽いキスを交わしている。頬だったり、唇だったり。そこまで含めての願掛けの曲らしい。

「ちゅ、てしないの? お父さまお母さま」
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