拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「ん、うん。エディそれは……」

 咳払いして、フェリスベルトは口ごもった。その隣でリュティシアはほんのり赤くなる。自分が参加したのはそんな決まり事のある歌だったのか。

「あの……申し訳ありませんわフェルさま」
「いや私も知らなくて……」

 ごにょごにょ謝罪し合うウブな婚約者たちに、町の人々からは生温かい笑いが寄せられた。そして声が飛ぶ。

「フェリスベルト殿下ー! ご結婚、おめでとうございまーす!」
「お式が楽しみですねぇ!」
「王女殿下、とっても素敵なダンスでした!」
「エドゥアルドさま、可愛さ世界一!」

 お祝いと声援に驚いて、リュティシアは広場を見回す。詰めかけた人々が笑顔なことに、ふと心の中で力が抜けた。
 隣国から来た、わけのわからぬ加護〈育成〉を持つとされる王女リュティシア。それでもアルヴェインの民は受け入れてくれるのか――。

「――ありがとう、みなさま」

 リュティシアは凛と通る声で言うと、優美なカーテシーをしてみせた。
 民に対して礼を取るなど――しかしその姿は誇り高く、気品に満ちている。そして振りまいた微笑みは愛らしかった。広場は一瞬ぽかんとしてから、どよめきに包まれた。

「リュティ――」

 ひと声で民衆をとりこにしてしまった婚約者にフェリスベルトは内心舌を巻く。

(まったくこの人ときたら――)

 たまらなく愛おしい。そう思ったらフェリスベルトの体が勝手に動いた。
 リュティシアの頭にそっと片手を添えると、額に軽い口づけ――。

「ひゃんっ」

 まったく麗しくない悲鳴をあげて真っ赤に照れるリュティシアに、また人々が喝采を送った。


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