拳にモノを言わせますけどよろしくて?
  ✻


「あん、あんな大勢の前で……」

 リュティシアはしばらくブツブツ言っていた。うっかり動揺してしまったのが恥ずかしかったのだ。
 王宮前広場に戻りながら、フェリスベルトも自分の行動に驚いてはいる。あんな風に愛があふれてしまうとは思わなかった。
 でもいい機会だ。折にふれ、こうしてリュティシアへ愛を伝え、恋に落とすことができればと思う。少し調子に乗ってささやいてみた。

「二人だけの時ならよかったのかい?」
「――!」

 リュティシアがまた硬直しかける。露骨に顔をそむけるのが可愛くて、フェリスベルトは楽しくなってしまった。

(なるほど、恋とはいいものだ……)

 こんな幸せがあるなんて知らなかった。
 だがあまりからかうとリュティシアが怒るかもしれない。そのへんの加減をしっかり見極めなくては、と生真面目なフェリスベルトは自戒した。



 設置された凍結機械の周りには人だかりができていた。姿を見せた王弟一家に晶術師たちが一礼する。

「すまない、待たせたか」
「いえ。時間通りで」

 前の方に招かれたリュティシアたちが落ち着くと、若い技師が声を張りあげた。

「では始めます! まず器に水を注ぎ――」

 高い台の上で、ひとつひとつの手順を見せながら技師が機械をセットする。透きとおる〈冷〉の結晶も布越しに持って掲げられ、披露された。
 だが機械の中の反転晶術の陣は門外不出。フェリスベルトも目の当たりにしたことはない。その形を知ることが許されるのは晶術師のみだ。

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