拳にモノを言わせますけどよろしくて?

16 過去を受けとめて

  ✻ ✻ ✻


 夏至祭も終わり、街も王宮もいったん落ち着いた。次に控える行事はいよいよリュティシアたちの結婚式となる。

「そうなのよね……お式……」

 だらん、と自室のソファに身を投げ出してリュティシアはうめいた。
 現在エドゥアルドは家庭教師の時間。リュティシアは王宮内に与えられた滞在用の部屋に引き取り、休憩中だ。
 ユーニスがテーブルにレモン水を出してくれた。ここはガルディアより暖かい――というか夏なので暑い。慣れない気温にリュティシアは少しバテ気味だった。

「なんですかリュティさま。何か気がかりでも?」
「そういうわけじゃないけど」

 式の準備は着々と進んでいる。エドゥアルドは可愛い。問題はない。
 でもドレスの試着をすればフェリスベルトが「綺麗だね」と熱っぽく微笑みかけるし、結婚後に引っ越す予定のリュティシアの部屋がフェリスベルトのすぐ隣に用意されるし、そのためなのかリュティシアの好みを細かく訊かれるし。

「……とにかくフワフワして落ち着かないの」
「あらあら。なんだか幸せそうな悩みじゃないですか」

 ユーニスはヘラヘラ笑った。
 はたから見ても、フェリスベルトがリュティシアとの距離を縮めようとしているのはわかる。だがそれの何がいけないのか。今後の夫婦円満に向け、ぜひ頑張ってほしいぐらいだ。

 すると表のノックが鳴り、ユーニスが対応に出た。リュティシアは蜂蜜入りのレモン水でのどと心を潤す。

(フェルさま――)

 婚約者のおもかげを想ったら、心臓がバクバクした。
 これはどうしたことだ。病気なのか。末期症状じゃないのか。いや、なんの?

 フェリスベルトに不満などない――と思う。
 先妻よりもリュティシアと生きる未来が大切だと明言してくれたのだし、誰かをないがしろにする不安からは解放された。フェリスベルトを拒む要素も、つける文句もないはずだ。そしてエドゥアルドは可愛い。

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