拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「どうした。そりゃあアデリア嬢はかわいそうだが……ああ、もしかしてリュティの〈看破〉が働いたのかい? 見えていたが助けられなかったとか」
「違いますの。何も見えませんでしたわ、今回は……」

 リュティシアはポロリとこぼれた言葉のままに告白した。

「昔……幼なじみが馬車の事故で亡くなったことがあって」
「リュティ……」

 フェリスベルトは呼吸が止まりそうになった。なんとか言葉を絞り出す

「それはつらいことを思い出させたね。すまない」
「いいえ、仕方がありませんもの」

 リュティシアは静かに微笑んだ。しかしその笑顔が無理をしていて、フェリスベルトはいたたまれない。なんとか励まそうと言いつくろった。

「リュティの〈看破〉は直前に働くものだろう? 気にしなくていい。どうしようもないことだったはずだ」
「あの頃は違ったのですわ……」

 リュティシアはつぶやいた。
 幼い頃、リュティシアの〈看破〉はもっと先のことも見えた。焦点を絞れば少し離れた場所のことも、見知らぬ人々の姿さえも映し出すことができた。
 今は何かが起こる直前に、ごく身近な所の、自分もしくは大事な人のことしか見えないのだが。

「……そうだったのか」
「ええ……友だちが母君と一緒に旅行に出ましたの。私、あの子がどうしているか、雨に降られたりしないかと思って〈看破〉を使いましたのよ。こっそり」

 〈看破〉は強い加護だ。無闇に使用して人の未来をねじ曲げるようなことになってはいけない。
 だから幼いリュティシアは普段〈看破〉を封じるよう命じられていた。別によその人のことなど見たくもないし、それでよかった。
 だが友だちのことが知りたくて禁を破ったのだ。すると見えた。しとしと降る雨の中、土砂崩れに巻きこまれる馬車が。

「迷いましたわ。〈看破〉を使ったことを叱られたくなくて。でも放っておけない、そう思って父に泣きついた。あの子を助けてって。父は早馬を飛ばしてくれたけど……間に合わな、かっ……」

 リュティシアはこらえきれずに涙をこぼした。
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