拳にモノを言わせますけどよろしくて?
  ✻ ✻ ✻


「エディ、ご機嫌いかが? ――あ、あらフェルさま、いらしたんですの」

 エドゥアルドと遊ぼうと訪ねてきたリュティシアは、そこに婚約者を見つけてうろたえた。目が泳ぐ。今はフェリスベルトに会うのが気まずくて仕方ないのだ。
 いつもなら執務室へおもむいているはずの時間。何故まだ居間にいるのか。肝心のエドゥアルドは子ども部屋に留め置かれていて姿がない。これはフェリスベルトの罠なのだった。

「リュティを待っていたんだよ」

 フェリスベルトは婚約者から避けられていても気を悪くする様子はなかった。リュティシアにしてみれば無理もない反応だからだ。



 ――過去を思い出し、打ちのめされ泣いたリュティシア。抱きしめて愛をささやいたフェリスベルト。
 あの時、婚約者の胸にすがりつきぼう然としていたリュティシアを現実へ引き戻したのは、駆け込んできたエドゥアルドだった。

『おにわにしらないムシがいるの! お母さまもみにきて!』

 まったく雰囲気ぶち壊しな用事でリュティシアを迎えに来たエドゥアルドは、父に身を預ける母という状況にキョトンとした。

『お父さま、なんでいるの……?』

 口をポカンとしたエドゥアルドを、後ろから走ってきたユーニスとカティアが必死で回収にかかる。

『あああーっ! 今ちょっとお取り込み中ですからねえっ』
『失礼いたしました、ささ、戻りましょうエドゥアルドさま!』
『え、え? お母さまぁ……?』
『いや皆、待て! リュティは少々具合が悪くてだな……ユーニス、リュティを休ませてやってくれ!』

 これだけの目撃者に囲まれた後で再び二人にされても、何をどうすればいい。フェリスベルトはそっと婚約者の頬をぬぐうと、そそくさと退散してしまったのだ。


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