拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「だって加護〈剛力〉はリュティに与えられた祝福だ。何かあった時には、ためらわず発揮してくれてかまわない。私はリュティの武術も愛しているんだからね」
「フェルさま……」

 愛している。
 そう言われてリュティシアは目を伏せた。でも口の端はニヨニヨ笑んでしまう。
 リュティシアだってフェリスベルトを拒絶するつもりなどなかった。恥ずかしくてどうしようもないだけで、フェリスベルトに対して胸が高鳴り困っている。
 それにしても武術ごと受け入れる宣言なんて、どうして今また。

「リュティにはリュティらしくしていてほしい。どんな加護だろうと私は否定したりしないよ。発動した加護をどう活かすかは、リュティじゃなく私が担うべきことだと思うんだ」
「――――」

 フェリスベルトの贈り物は、リュティシアの過去を告白されて考えたものだった。
 加護があっても救えなかった命と、リュティシアが負った傷。拒否した祝福。
 だがもうそんなことはしなくていい。フェリスベルトが側にいて守る。守らせてくれ、という願いをこめての贈り物。

「フェルさま……私……」

 リュティシアは声を詰まらせた。
 こんなに幸せなことがあるのか、人生には。
 フェリスベルトはゆっくりリュティシアの言葉を待っている。胸にふくれあがる未経験の気持ちをかみしめて、リュティシアはつぶやいた。

「……大切にしますわ」

 そうっと手袋を箱から取り出す。そしてはめてみた。手袋はリュティシアの手にピッタリで――。
 グッ!
 拳を握り、開く。

「いい感じでしてよ……お任せくださいませ。フェルさまとエディのことは、私が守りますわ!」
「あ、いや……そういう意味で贈ったのでは」

 フェリスベルトの目が点になった。
 どうにもこの婚約者殿は――勇ましすぎて扱いが難しい。

< 134 / 170 >

この作品をシェア

pagetop