拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「……なるほど、どちらもセミオンの婚約が壊れる結果になってはいますが」

 フェリスベルトは考え込む。そんなことをして利を得る人物などいるだろうか。

「あるいは王家そのものへの不満、かもしれんのだ」

 考えたくないが、と王は苦々しかった。
 犯人が示したいのがアルヴェイン王権への反旗だとすると、事件が二人の王子につながっていることもうなずける。

「……となると陛下の御身が案じられますね」
「自分を除くなフェリスベルト。おまえも王族の一員だろう。あとエドゥアルド、さらにはリュティシア王女に飛び火すれば外交問題にすらなる」

 それが今日、フェリスベルトまで呼ばれた大きな理由だった。息子と婚約者の名が出てフェリスベルトの頬が硬くなる。それはこの世でいちばん大切な存在。低い声が出た。

「……許せません、二人に何かあったら」
「うむ。身辺にはくれぐれも気をつけるように」
「しかし陛下、であれば結晶院への捜査協力要請は?」

 フェリスベルトはいま一度ここに居合わせる人員を見た。宮廷監察局――王宮と貴族の問題・事件を調査調停する部局の上層部のみがいて、王立結晶院からは誰も来ていない。

「……晶術師が犯行に関わっているのだろうに、前回も役に立たなんだからな」

 王は渋い顔だった。燭台の事件では結局、犯人の目星どころか結晶の出所も不明。結晶在庫に不備は見当たらなかったと報告され、王は結晶院を見限ったのだ。

「なんらかの隠蔽があるとすれば、協力要請はむしろ解決への害となる。外部からの捜査であぶり出すのだ」
「はっ」

 皆が頭を下げる。そして王は弟へ目を向けた。

「フェリスベルト、おまえは若い晶術師に近しくしているな。何か嗅ぎつけたら報せるように」
「承知しました」

 兄王に対しかしこまりながら、フェリスベルトはため息をかみ殺した。
 親しくなった若い晶術師たち。晶化術を有効利用するため邁進する彼らの中に、暗い情熱を犯罪へ傾ける者がいるだなんて考えたくない。
 それはもちろん、晶術師を率いてきた結晶院だって同じことだろうが。


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