拳にモノを言わせますけどよろしくて?
  ✻


 パルミロとセミオンの王子たちにも、同じ内容が通達された。
 二件とも故意に引き起こされたもの――聞かされて、それぞれが動揺と疑心暗鬼に叩き落とされる。最近はどちらも暗い想いに取り憑かれたようになっていて、少しの気がかりだけでこの世の終わりな心境になるのだった。
 パルミロは疑う。

(王太子たる私の暗殺未遂で、セミオンやモンサント侯爵は悪評を立てられた。それを払拭し同情を買うための令嬢の負傷と考えれば辻褄が合う――自作自演なのでは?)

 しかしセミオンも決めつける。

(共通の被害者は私だけじゃないか? ――第二王子たる私の婚約、結婚、そして跡継ぎの誕生を面白く思わないパルミロ兄上が手を回したのだ。きっとそうだ)

 二人とも互いの企みなのだと思い込み、怒り、警戒した。
 なので当然、正面切って問いただしたりすることもなく――兄弟の心はどこまでもすれ違っていく。


  ✻ ✻ ✻


 リュティシアは、みずからの気持ちが不思議で仕方なかった。
 フェリスベルトを想うと夢見心地で浮かれてしまう。ふと会いたくなる。離れている間も今どうしているか気になる。

(フェルさま……)

 油断すると口をついてしまいそうな、その名前。でもうっかりつぶやくと、聞きつけたユーニスが特大のニヤニヤ笑いを浮かべるので気をつけねばならなかった。

 これは、たぶん恋。
 リュティシアにとって初めての。

 フェリスベルトには、はつらつとした若さはない。ほとばしる情熱をぶつけられクラクラさせられることも。
 だけどおだやかな笑顔と優しいまなざし。大人の余裕。遠慮がちに伝えられるリュティシアを守りたいという願い。
 そんなものたちがリュティシアの胸に染みわたり満ちていくのだ。

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