拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 向き合ってソファに座ると、フェリスベルトは再び真剣な目をした。そしてアデリアの事故に使われた結晶のことを伝えたのだ。王家そのものが狙われている可能性が案じられることも。

「そんなわけでリュティも身辺に注意してほしい。考えてみればそもそもの始まりは、リュティが公式にアルヴェインへ迎えられた式だった。犯人が外交面での不満を抱えている可能性もあり得るからな」
「そうですわね……」
「あと、このことエディへは言わないでくれ。おびえさせたくない」
「わかりましたわ」

 神妙にうなずき、リュティシアは可愛い息子のことを想った。あらためて決意する。

「エディのことも、フェルさまも。私が守りますわよ」
「……いや、護衛たちがあちこち点検して頑張ってくれているから。リュティも彼らに守られてやってくれ」

 あまり末端まではリュティシアの〈剛力〉のことは教えていないのだ。普通の姫君として振る舞ってもらわねば困る。リュティシアは拍子抜けした顔でスルリと手袋を取り出した。

「万一にそなえていつも持っておりますのに」
「……ハンカチ用の隠しに、その手袋を?」

 フェリスベルトの頬が引きつった。手袋を贈ったのは「加護も含めリュティのすべてを受けとめるから不安にならないでほしい」というメッセージ。だがリュティシアは敵と戦うお墨付きを得たぐらいに考えていそうだ。

「……あまり張り切らなくていいんだよ」

 フェリスベルトはやんわりと制止してみた。その気持ちはリュティシアにも伝わったが、こちらにも言い分はある。

「だって……私が今いちばん大切に思うのは、フェルさまとエディなんですもの」

 いつもより、ちょっと小さな声になってしまった。はっきり「好き」とも言えていないくせに恥ずかしい。
 でも言外の意味を受けとめたのか、フェリスベルトは驚きに目を見開き――照れくさそうに笑ってくれた。

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