拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 青年期を過ぎ、落ち着いた大人の風格をかもし出す男性であるフェリスベルト。だが息子の肩に手をやり微笑む頬がぎこちない。ある理由があって緊張気味なのだ。
 しかしリュティシアは甥夫婦を救った人。あらためて頭を下げる。

「二人とも無事でした。リュティシア王女のおかげです。私からもお礼を申し上げます」
「とっさに動いてしまい、差し出た真似だったと恥じ入りました。お許しいただけて感謝いたします」
「とんでもない。それよりあなたのお体を案じていました。もうよろしいのですか」
「なんともありませんわ。驚きのあまり倒れてしまいまして……」
「無理もありませんよ。さあ、あちらでお座りください」

 社交辞令の応酬ではあるが、フェリスベルトの態度も言葉も、紳士的で誠実だとリュティシアは判断した。こんな人が相手ならよかったのに。どうしてセミオンが婚約者なのだろう。
 リュティシアはうんざりしたのを隠してフェリスベルトについていく。奥の木陰にしつらえられたテーブルで待っていたのは国王ひとりきりだった。そばには給仕のメイドが控えるだけ。あまりに簡素な面会だ。

「ようこそ。昨日は失礼があり、大変すまなく思う」

 立ち上がった王の言葉にリュティシアは微笑みと一礼のみで応えた。
 国王として、息子の不始末には困ったことだろう。リュティシアはあえて内容に言及しないことで「なあなあに済ませてもいいですよ」と意思表示したのだ。さて、それに対してどんな提案がなされるものやら。

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