拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「この本を探しに行って、すれ違いました」
「そうか、ありがとう。私もちょうど倉庫に行くところだ――ところで今度は何をしようとしている?」

 フェリスベルトは馴染みの術師がウキウキ歩いているのが気になったのだ。何か思いついたに違いない。相手は待ってましたとばかりに胸を張った。

「これはですねえ、乾燥機を作れないかと思いまして陣の研究を!」
「乾燥……?」

 また妙なことを、とフェリスベルトもリュティシアもキョトンとなった。だが

「湿気取りです。感情を〈渇望〉に絞って結晶化したら、なんとかなりませんかね。渇き、てぐらいですから」
「うん……どんな利用法があるんだ?」
「いろいろできますよ。湿度調整が必須の発酵食品とか酒とかの生産が安定するんじゃないかと」
「まあ……」

 リュティシアはいたく感心してしまった。雨の日の洗濯物とか、そんなことではなかったらしい。きちんとした産業への応用を目標にしているのか。

「とても面白い研究をなさっているのね」
「ありがとうございます!」

 褒められて術師はニコニコと去っていく。普段のフェリスベルトがどんな人たちと仕事をしているのか、片鱗がわかった気がしてリュティシアも満足だった。

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