拳にモノを言わせますけどよろしくて?
愛は呪い。そして祈り

18 黒い呪いと癒やしの手

  ✻ ✻ ✻


「――あっ! パユミオ(・・・・)お兄さま!」

 エディが嬉しそうに叫んで駆け出した。リュティシアと連れ立って庭へ出る途中、回廊の柱に寄り掛かるようにして王太子パルミロがたたずんでいたのだ。
 幼い従兄弟の声に、パルミロは目を向ける。その目の下にくっきりと隈ができていてリュティシアは息を飲んだ。
 それでも相手は王太子だ。ひとまず深く礼をしたリュティシアの隣で、エドゥアルドは心配そうにする。

「お兄さま……げんき、ない?」
「エドゥアルドは元気か」
「はいっ」
「そうか」

 素っ気なく、覇気のない話し方。相対してリュティシアの肌がゾワリとした。
 回廊の外には夏の陽がくっきりと落ちている。暴れるような強い光にさらされ、木々は生命を謳歌していた。
 なのにパルミロが立つ回廊の一角は黒々と沈む。その陰が王太子から染み出しているように感じたが、リュティシアは戸惑いを押し隠した。微笑みを頬に貼り付ける。

「王太子殿下、ご機嫌よろしゅう」
「うん。しばらくだった」

 最初に燭台から救ったことで、王太子夫妻とリュティシアの関係は良好に推移している。お礼の品を届けられたし返礼の訪問もした。
 その頃には明るく前向きな人柄だと感じたパルミロなのに、今や見る影もない。いったい何が。

「……こちらでご休憩なさっておいでとは知らず、うるさくして申し訳ありませんわ」
「いや。もう戻る」
「お疲れのご様子ですのね。エディも心配そうにしております」
「エドゥアルド……王女殿下に馴染んだようだな」
「温かいお言葉、嬉しゅうございますわ」

 まったく心に響かない、空々しい会話。ユラリと柱から身を起こしたパルミロは無言で去る。

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