拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 実をいうと宮廷でもパルミロの憔悴した姿は噂されていた。体調不良だとして表に出ることが減っており、フェリスベルトはしばらく顔を見ていない。

「エディは、殿下を『怖い』と言いましたの。私もご様子にゾッとしましたわ」

 リュティシアが言い添える。いつも勇ましい婚約者がそんなことを言い出して、フェリスベルトは深刻な顔になった。

「怖いほど……なのか」

 ――その不調、どうやらセミオンも同じらしいと言われていた。
 二人とも苛々し、よく眠れず、公務に障りが出ているらしい。仕える者たちもピリピリと萎縮気味だとか。
 もちろん医療は受けている。療術師と晶術師によるものだ。
 その「心」を担当する方のジェレミアスは、王子二人の元へ日参するほどの勢いだそう。しかしあまり効果は見られない。結晶を取り出し過ぎては危険だからだ。
 晶化術による治療が容態に及ばないことを平身低頭で詫びるジェレミアスに、国王は無言だった。魔法のことは専門家に任せるしかない。問題は体の方かもしれないし。

 フェリスベルトは息子を抱き上げ、ギュッとした。エドゥアルドの小さな手が首にしがみついてくる。父の腕の中も安全地帯だ。
 パルミロの危機をしっかり伝えなくては。エドゥアルドは口をとがらせ主張する。

「お兄さま、くろかった」
「黒い?」
「エディにはそう見えたのですわ。確かに殿下は日陰にいらっしゃったのですけど……」

 リュティシアはホウとため息をついた。幼く繊細なエドゥアルドには、パルミロそのものが黒いモヤモヤに包まれているように思えたらしい。

「あんまり怯えているので、フェルさまが戻られるまで一緒におりましたの」
「そうだったのか、ありがとうリュティ」

 フェリスベルトは息子の背をポンポンとし、ことさらに明るい声を出す。

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