拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「お母さまがいてくれて良かったなエディ。でも、これでは夕食もいただけないぞ。リュティの膝に座って、あーん、てしてもらいたいのか?」
「まあ……エディが赤ちゃんに戻ってくれますの? 私そんな姿も見てみたいわ」
「やだっ!」

 父親に抱っこされていたエドゥアルドは、放せ下ろせともがいた。六才児の誇りにかけて赤ちゃん扱いは断固拒否だ。

「ぼく、ちゃんとするもん!」
「そうか、よし」

 父母に挟まれ、エドゥアルドはやっと安心したらしい。床に立った息子の頭をなでてやり、フェリスベルトは婚約者にはにかんだ笑みを向けた。

「食事はリュティもこちらで一緒にどうだろう」
「ええ、喜んで」

 リュティシアはいつも昼間の短い間しか王弟の部屋を訪問しない。婚約者であるという一線をまだ守っているのだ。
 しかしフェリスベルトはもっとリュティシアと共に過ごしたいと感じていた。最近のリュティシアからは、やわらかく慕わしげなまなざしをもらえることも増えてきたから。

 和やかな食事。食後の軽い酒。
 エドゥアルドがきちんとおやすみなさいを言い、笑顔のリュティシアをフェリスベルトは部屋まで送る。そして――別れの口づけを、手の甲に。
 なんて幸せでおだやかな時間だろう。

 ところでリュティシアはまだ、フェリスベルトに「好き」とも「愛している」とも「お慕いしています」ともハッキリ言えていない。「大切です」なら言ったっけ。でもギリギリ言えたのが「私が守ります」なのは、むしろダメ。
 男性をぶん殴るのは簡単なのに、恋を伝えるのはなんと難しいことか。これでもリュティシアは乙女心を抱え、悩んでいるのだった。

< 149 / 170 >

この作品をシェア

pagetop