拳にモノを言わせますけどよろしくて?
✻ ✻ ✻
今日のフェリスベルトは出仕を遅らせ家族のもとにいる。妙な胸騒ぎがしたからだ。
いつも朝の謁見に間に合うよう兄王のもとへ馳せ参じるフェリスベルト。しかしここ数日の宮廷は、どんよりと重い空気に包まれている。
王太子パルミロ。第二王子セミオン。二人の体調は回復しない。そんな息子たちを案じてか国王まで暗く耐える顔で執務に当たっていて、臣下は不安におそわれていた。
「エディは元気なようでよかった」
ここは王弟一家の居住区の入り口。壁際に立ったままのフェリスベルトは、玄関ホールにあたる場所で溌溂と模擬剣を振るエドゥアルドのことを安堵の目でながめた。指導しているのはリュティシアではなくトルカートだ。
普段はフェリスベルトの従者として表へ行ってしまうトルカートは、王弟の護衛も兼ねていて剣にすぐれる。腕力と体術のリュティシアとは違う教師役を得て、エドゥアルドの瞳は輝いていた。短い腕に、子ども用の剣。エドゥアルドなら屋内でも稽古ができる。
「……そんなに宮廷は不穏ですの?」
「ああ。なんというか、エディが『黒い』と表現したのがわかる気がする。陛下もパルミロもセミオンも……闇にとらわれているというか」
息子の運動を見守りながら、両親はこそこそ話していた。国王一家をおそった不幸の影。王族すべてに及ぶのではないかとフェリスベルトは案じている。
それで家族から離れたくないと思ってしまったのだが、今のところ問題はないようだ。フェリスベルト自身もいたって健康だし、なんなら胸には恋と愛とが満ちていてあたたかい。その源のリュティシアはニッコリ笑ってみせた。
「エディは光そのもののような子ですもの。ご心配なさらないで」
「そうだな。私がしっかりして陛下をお助けせねば。そろそろ行こう」
「えー? お父さま、おしごと?」
聞きつけたエドゥアルドが拗ねた口ぶりになった。
「そんなぁ……」
今日のフェリスベルトは出仕を遅らせ家族のもとにいる。妙な胸騒ぎがしたからだ。
いつも朝の謁見に間に合うよう兄王のもとへ馳せ参じるフェリスベルト。しかしここ数日の宮廷は、どんよりと重い空気に包まれている。
王太子パルミロ。第二王子セミオン。二人の体調は回復しない。そんな息子たちを案じてか国王まで暗く耐える顔で執務に当たっていて、臣下は不安におそわれていた。
「エディは元気なようでよかった」
ここは王弟一家の居住区の入り口。壁際に立ったままのフェリスベルトは、玄関ホールにあたる場所で溌溂と模擬剣を振るエドゥアルドのことを安堵の目でながめた。指導しているのはリュティシアではなくトルカートだ。
普段はフェリスベルトの従者として表へ行ってしまうトルカートは、王弟の護衛も兼ねていて剣にすぐれる。腕力と体術のリュティシアとは違う教師役を得て、エドゥアルドの瞳は輝いていた。短い腕に、子ども用の剣。エドゥアルドなら屋内でも稽古ができる。
「……そんなに宮廷は不穏ですの?」
「ああ。なんというか、エディが『黒い』と表現したのがわかる気がする。陛下もパルミロもセミオンも……闇にとらわれているというか」
息子の運動を見守りながら、両親はこそこそ話していた。国王一家をおそった不幸の影。王族すべてに及ぶのではないかとフェリスベルトは案じている。
それで家族から離れたくないと思ってしまったのだが、今のところ問題はないようだ。フェリスベルト自身もいたって健康だし、なんなら胸には恋と愛とが満ちていてあたたかい。その源のリュティシアはニッコリ笑ってみせた。
「エディは光そのもののような子ですもの。ご心配なさらないで」
「そうだな。私がしっかりして陛下をお助けせねば。そろそろ行こう」
「えー? お父さま、おしごと?」
聞きつけたエドゥアルドが拗ねた口ぶりになった。
「そんなぁ……」