拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「殿下!」

 居合わせた人々の間から悲鳴があふれた。

「なんてことだ、救護を!」
「療術師のところへ、連絡を!」

 慌ただしい動きの中、エドゥアルドは顔を上げてチラリと従兄弟たちの方を確認した。

「ふえっ……お兄さま……」

 息を飲むエドゥアルドの目を凄惨な現場からそらそうとし、リュティシアは背を向けさせる。

「エディ見ないで」
「でもだって、お兄さまたち。しんじゃうよ」
「死なないわ! だいじょうぶ……だいじょうぶよ!」

 負ったのがどれほどの傷かわからないが、リュティシアは言い聞かせる。だがエドゥアルドは首をブンブンとして、リュティシアの手を振り払った。

「だめだよ、だってまっくろだもん!!」

 叫んだエドゥアルドは、王子たちのもとへ走った。
 騎士たちに囲まれ担架に乗せられそうになっている二人の従兄弟。ついこの間まで普通に可愛がって遊んでくれていた、兄のような人たちだ。
 それがエドゥアルドには、真っ黒に染まって見えた。血の赤ではない。黒。
 人が蝕まれて行く。
 そのさまはまるで、何かの呪いのよう――。

「お兄さまぁ!!」

 駆けつけて、エドゥアルドは二人の手を握った。
 もう剣は取り落し、力なく投げ出されている手。
 すがりつく小さな手のひらに、二人の指先がピクンと動き――。

「ぐっ、あう……」
「うう……は、ああっ……」

 パルミロもセミオンも、ゆっくりと身をよじった。苦しげに。そして――だんだん呼吸が楽になっていく。

「――影が」

 リュティシアは目を疑いながらつぶやいた。
 見えたのだ。二人にまとわりついていた暗いモヤが消えるのが。

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