拳にモノを言わせますけどよろしくて?

19 粉砕してもよろしくて?

  ✻


 王子二人は気晴らしのため運動をと勧められて剣を振りに行ったのだった。なのに互いの姿が見えたとたん、吸い寄せられるように戦い始めた。
 息子たちが起こした事件の報に、王は言葉を失った。フェリスベルトが駆けつけて励ますも打ち沈んで身じろぎもできない。

「傷は深くないようです。お気を確かに」

 とはいえ怪我の部位が気になる。目。そして顔だ。生還したとしても治り具合によっては王太子の地位に影響するかもしれない。いったい二人に何が起こったのか――。

「へいか……」

 侍従の案内で国王執務室におずおず入ってきたのは、ふるえる小さな声だった。

「エディ? それにリュティも」
「陛下、突然のお目通り、失礼いたしますわ」

 エドゥアルドを連れて入室し、深く一礼したのはリュティシアだった。事件を目撃した者として報告せねばならないことがある。

「こんな場合ですので、用件のみ申し上げますわね。パルミロ殿下とセミオン殿下には――何かしらの魔法が掛かっていたのだと思います。」
「リュティ? どういうことだ」

 その言葉で国王は顔を上げた。が、フェリスベルトの疑問に口を挟むことはない。このまま直言を許されたと判断し、リュティシアは続けた。

「最近のお二方の状態は明らかにおかしかったかと。先日パルミロ殿下にお会いして、エディは『黒い』と怯えましたの。そして先ほども――戦うお二人を『真っ黒に染まっている』と」
「黒い……」

 国王はやっと声を絞り出した。リュティシアは厳しい目で至高の人を見つめる。

「エディ。陛下のご様子はどう見えて?」
「へいかも、ちょっとこわい」

 体を縮こまらせたエドゥアルドの言葉にフェリスベルトは目を見開いた。
< 155 / 170 >

この作品をシェア

pagetop