拳にモノを言わせますけどよろしくて?
✻
リュティシアは走った。隣ではフェリスベルトがエドゥアルドを抱き、同じく駆けている。三人で王立結晶院へ向かっているのだ。
「――リュティシアが行かなくてもいいんだが」
「何をおっしゃるのフェルさま。こういうのは毒を喰らわば皿までと言いますのよ」
「まあ、乗りかかった船とも言うな」
そしてエドゥアルドを連れているのは、どうやら件の反転晶術が効かないらしいから。子どもを巻きこみたくはないが、ジェレミアスに対抗する手札の一枚として仕方なく抱いてきたのだった。もしフェリスベルトが動けなくなったら助けを呼びに行くぐらいならさせられる。
王宮の廊下を走る、王弟一家。そんなものを見て誰もがポカンと見送る。だが急ぐのだ。パルミロとセミオンの一件は宮廷に広まっているはずだ。
この犯行にジェレミアスが関わっていないわけがない。王子二人を担当していた晶術師はジェレミアスひとりだ。もしその目的が王子二人の暗殺なら、成功不成功にかかわらず逃亡を企てるだろう。早急に確保しなくては。
「どうしてこんなことをしたのか……問い詰めなければ気が済まない」
珍しくフェリスベルトが攻撃的な言い回しをした。
だがそう感じるのも無理はなかった。ジェレミアスは母エリセテ太后の信任も篤く、幼い頃からそばにいた人物。いつから何を考えていたのか、狙いはなんなのか知りたかった。
「――ジェレミアスはいるか! 勅命である。急ぎ御前へ!」
結晶院に踏み込むなり大声で呼ばわったフェリスベルトに、晶術師たちはうろたえた。いつもおだやかな王弟殿下が血相変えて、しかも一家総出とは何事だ。でもキョロキョロしつつ、下問には答えようとする。
「ジェレミアス殿――おい、誰か知らないか」
「ええっと、さっき確か倉庫の方に」
「倉庫か、わかった」
フェリスベルトはツカツカと急ぎ足で向かう。「呼んで参りますよ!」という制止は無視してリュティシアも小走りについていった。
リュティシアは走った。隣ではフェリスベルトがエドゥアルドを抱き、同じく駆けている。三人で王立結晶院へ向かっているのだ。
「――リュティシアが行かなくてもいいんだが」
「何をおっしゃるのフェルさま。こういうのは毒を喰らわば皿までと言いますのよ」
「まあ、乗りかかった船とも言うな」
そしてエドゥアルドを連れているのは、どうやら件の反転晶術が効かないらしいから。子どもを巻きこみたくはないが、ジェレミアスに対抗する手札の一枚として仕方なく抱いてきたのだった。もしフェリスベルトが動けなくなったら助けを呼びに行くぐらいならさせられる。
王宮の廊下を走る、王弟一家。そんなものを見て誰もがポカンと見送る。だが急ぐのだ。パルミロとセミオンの一件は宮廷に広まっているはずだ。
この犯行にジェレミアスが関わっていないわけがない。王子二人を担当していた晶術師はジェレミアスひとりだ。もしその目的が王子二人の暗殺なら、成功不成功にかかわらず逃亡を企てるだろう。早急に確保しなくては。
「どうしてこんなことをしたのか……問い詰めなければ気が済まない」
珍しくフェリスベルトが攻撃的な言い回しをした。
だがそう感じるのも無理はなかった。ジェレミアスは母エリセテ太后の信任も篤く、幼い頃からそばにいた人物。いつから何を考えていたのか、狙いはなんなのか知りたかった。
「――ジェレミアスはいるか! 勅命である。急ぎ御前へ!」
結晶院に踏み込むなり大声で呼ばわったフェリスベルトに、晶術師たちはうろたえた。いつもおだやかな王弟殿下が血相変えて、しかも一家総出とは何事だ。でもキョロキョロしつつ、下問には答えようとする。
「ジェレミアス殿――おい、誰か知らないか」
「ええっと、さっき確か倉庫の方に」
「倉庫か、わかった」
フェリスベルトはツカツカと急ぎ足で向かう。「呼んで参りますよ!」という制止は無視してリュティシアも小走りについていった。