拳にモノを言わせますけどよろしくて?
リュティシアはエドゥアルドの手を引いて階段を下りた。目の前にフェリスベルトの背中がある。さすがに自分が先でとフェリスベルトが主張したからだ。リュティシアが強いのはわかるが、男としての誇りの問題だった。
階段を下りきったところには粗末な木の扉がある。その中からも光が漏れていて、ジェレミアスがいると思われた。
リュティシアはとりあえず手袋をはめた。何が起こるかわからないから。
「開けるよ」
「ええ」
ささやき合い、静かにノブを回す。
「――もうこの部屋にお気づきですか、フェリスベルトさま」
悲しげに、だが愛おしそうなまなざしでそこにいたのはジェレミアス。フェリスベルトの後ろを見て意外そうにする。
「これはエドゥアルドさま、王女殿下まで。最後にお会いできて嬉しゅうございます」
「最後とはどういうことだジェレミアス」
訊き返しながら、フェリスベルトはジェレミアスの背後に目が釘付けになっていた。
黒い大きな結晶が置かれている。人の背丈を超えるほどの大きさだ。
その下の床には何やら陣が描かれていて――。
「いや! それはいやぁっ!」
エドゥアルドが悲鳴をあげてリュティシアの後ろに隠れた。