拳にモノを言わせますけどよろしくて?
この部屋は黒い。もう空間そのものが黒く染まっているようにエドゥアルドには見えるのだった。フェリスベルトもさすがに不穏を感じて青ざめる。
「それは反転晶術か? 何をしている?」
「――呪っているのですよ、国王とその血すじの者を」
呪いをうそぶくくせに、ジェレミアスの笑みはやわらかかった。その視線にあふれる優しさがリュティシアを惑わせる。呪いとはそんな温かなものだっただろうか。
「兄上と、王子たちを? 呪った?」
「さようでございます。いえ、元はといえば前の王がいけないのですが――まあ王太子も第二王子もひどいことになったようですし、ようやくフェリスベルトさまにこの世をお渡しできる。エリセテさまが報われて肩の荷がおりた心もちですよ」
ははは、とジェレミアスは奇妙に軽い笑いをもらした。
だが言われたことを受けとめられず、フェリスベルトは数瞬考える。自分に世を? 母が報われる?
「――あなた、エリセテさまに横恋慕なさっていたの?」
先に答えにたどりついたのはリュティシアだった。信じられないという声だったが、その内容はほぼ正しくてジェレミアスは真顔になった。
「惜しい。何故過去形にするのです? ……愛していますとも、今でもね。素朴に笑い民に寄り添うエリセテさまをずっと愛しているんだ」
「ジェレミアスが……母上のことを」
「ええ、ええ。エリセテさまと会えるのが町の晶術院にいた私の唯一の楽しみだった。それをなんだ、前の王の後妻? もう跡継ぎの男子が少年になるほど育っていたのにそんな必要があったのか? 若い令嬢を王宮に閉じ込め産ませた子、フェリスベルトさまは結局ただの王弟として下に置かれている。なんのためにエリセテさまは――!」
泣き出しそうに顔をゆがめて、ジェレミアスは想いをぶちまけた。
この黒い結晶は、ジェレミアスが長年かけてみずから吸い取ったもの。エリセテを奪った先王への恨みと憎しみの凝った呪いだ。さもなければジェレミアスは恋を失った苦しみで憤死していただろう。
「それは反転晶術か? 何をしている?」
「――呪っているのですよ、国王とその血すじの者を」
呪いをうそぶくくせに、ジェレミアスの笑みはやわらかかった。その視線にあふれる優しさがリュティシアを惑わせる。呪いとはそんな温かなものだっただろうか。
「兄上と、王子たちを? 呪った?」
「さようでございます。いえ、元はといえば前の王がいけないのですが――まあ王太子も第二王子もひどいことになったようですし、ようやくフェリスベルトさまにこの世をお渡しできる。エリセテさまが報われて肩の荷がおりた心もちですよ」
ははは、とジェレミアスは奇妙に軽い笑いをもらした。
だが言われたことを受けとめられず、フェリスベルトは数瞬考える。自分に世を? 母が報われる?
「――あなた、エリセテさまに横恋慕なさっていたの?」
先に答えにたどりついたのはリュティシアだった。信じられないという声だったが、その内容はほぼ正しくてジェレミアスは真顔になった。
「惜しい。何故過去形にするのです? ……愛していますとも、今でもね。素朴に笑い民に寄り添うエリセテさまをずっと愛しているんだ」
「ジェレミアスが……母上のことを」
「ええ、ええ。エリセテさまと会えるのが町の晶術院にいた私の唯一の楽しみだった。それをなんだ、前の王の後妻? もう跡継ぎの男子が少年になるほど育っていたのにそんな必要があったのか? 若い令嬢を王宮に閉じ込め産ませた子、フェリスベルトさまは結局ただの王弟として下に置かれている。なんのためにエリセテさまは――!」
泣き出しそうに顔をゆがめて、ジェレミアスは想いをぶちまけた。
この黒い結晶は、ジェレミアスが長年かけてみずから吸い取ったもの。エリセテを奪った先王への恨みと憎しみの凝った呪いだ。さもなければジェレミアスは恋を失った苦しみで憤死していただろう。